日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
お粥の性状と嚥下動態の関係
―喉頭運動・筋電図・嚥下音の同時計測による評価―
林 豊彦金子 裕史中村 康雄石田 智子高橋 肇山田 好秋道見 登野村 修一
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2002 年 6 巻 2 号 p. 187-195

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抄録

嚥下機能障害者の嚥下機能を無侵襲かつベッドサイドで検査することを目的として,著者らは,喉頭運動・舌骨上筋群筋電図・嚥下音の同時計測システムを開発してきた.本論文ではこのシステムを,嚥下障害者の代表的な食品である“お粥”の嚥下動態の定量解析に応用した.

嚥下障害を扱う臨床では,患者がどのくらい簡単にお粥が飲み込めるかを評価する方法が強く求められている.そのような評価法には,従来次の3つがある:1)物性測定;2)官能検査;3)生理学的データの計測.著者らはこれまで,一般的なお粥である“全粥”と付着性の低い嚥下困難者用 “ふっくらおかゆR”((株)亀田製菓)の飲み込みやすさを,方法1)と2)で評価してきた.そこで本研究では方法3)を応用し,前記2種類のお粥の嚥下を生理学的に評価する.被験者は嚥下障害の症状が認められない健常男性7名とした.お粥の量と温度はそれぞれ5g,60℃に規格化した.実験の結果を次に示す:ふっくらおかゆR嚥下時は全粥嚥下時に比べて,A)喉頭がより速く挙上(特に運動初期);B)舌骨上筋群の筋活動が少ない.これらの結果A)とB)は,それぞれ危険率5%,1%で統計学的に有意であった.両結果から,ふっくらおかゆRは一般的な全粥よりも簡単かつ効率的に飲み込むことができることが分かった.さらに,我々の計測システムは嚥下動作の無侵襲かつ定量的な評価に有効であることも明らかになった.

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© 2002 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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