【目的】嚥下造影検査は,水平面の撮影が出来ないため食塊の前後左右への広がりについての情報は少ない.また嚥下内視鏡検査は,嚥下の瞬間は咽頭収縮により観察が出来ない.今回我々は,ヘリカルCTを用いて嚥下の動的評価を試みた.
【対象と方法】健常成人9名を対象とした.体位は,仰臥位・頚部正中位とした.ヘリカルCTは,SIEMENS社製SOMATOM Plus 4を用いた.CTスキャンは,6秒間施行し,0.1秒毎に評価を行った.声門レベルおよび食道入口部レベルのそれぞれの高さで撮影を行った.各被験者は,空嚥下およびバリウムゼリー摂食,3ml,15mlのバリウム溶液嚥下を施行した.
【結果】声門レベルにおいて嚥下中声門は閉鎖し両側梨状窩は狭小化していた.バリウムゼリー摂食時は,バリウムゼリーが両側梨状窩の正中を通過し,その後咽頭収縮が起こり,両側梨状窩は狭小化した.嚥下中は喉頭挙上により食道入口部が描出された.バリウムゼリー摂食にて嚥下中にバリウムゼリーが食道入口部の正中を通過しているのが描出された.食道入口部の最大開口面積は,空嚥下よりもバリウム溶液3ml,バリウム溶液3mlよりも15mlにおいて大きくなっており,矢状径のみならず横径も食塊量増加とともに拡大していた.
【考察】ヘリカルCTを用いた連続ダイナミックスキャンでは水平面における嚥下の瞬間が撮影可能である.空嚥下と食塊嚥下の比較,食道入口部の開口の程度など嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査にはない,新たな視点で嚥下動態を評価可能と思われる.