2002 年 6 巻 2 号 p. 236-241
頸部突出位が咽頭期嚥下に与える影響について検討するために,健常男性20名に嚥下造影検査を実施し,習慣位(通常の嚥下姿勢)と頸部突出位とを比較した.その結果,以下の知見を得た.
1.咽頭期の各指標では,喉頭移動距離,食道入口部の開大幅と開大時間が頸部突出位で有意に増加した(P<0.05).咽頭通過時間および舌骨移動距離には姿勢による有意差はなかった.
2.梨状窩の形状変化については,頸部突出により,梨状窩が広がり深くなった者が11名,幅は変わらず深くなった者は7名だった.
3.誤嚥はいずれの姿勢でも認められなかったが,喉頭侵入が習慣位で5名,頸部突出位で7名に認められた.喉頭蓋谷への残留は習慣位で3名,頸部突出位で1名に認められた.梨状窩への残留は習慣位で4名に認められたが,頸部突出位では残留が認められなかった.
以上の結果より,頸部突出位では,食道入口部の開大幅や開大時間が増加し,梨状窩が広がることにより,症例によっては嚥下に有利となる可能性が考えられた.しかし,健常者においても,頸部突出位では喉頭侵入を生じることがあり,誤嚥の危険性が高まる可能性があることも示唆された.