2002 年 6 巻 2 号 p. 247-251
<目的>
1.高齢者用介助スプーンのボール部の幅および深さの違いによる捕食時の残留の違いを明らかにする.
2.捕食時の残留の少ないボール部形態をもつ高齢者用介助スプーンを試作し,適切な一口量を供することができるかどうか検討する.
<方法>
(実験1)介護老人福祉施設において,入居している高齢者11名を対象に介助スプーンのボール部の幅が30mm,35mmの2種類のスプーンを試作し,介助下で捕食させた際のスプーン上の残留を比較検討した.
(実験2)介護老人福祉施設において,入居している高齢者11名を対象に介助スプーンのボール部の深さが3mm,5mmの2種類のスプーンを試作し,介助下で捕食させた際のスプーン上の残留を比較検討した.
(実験3)実験1,2の結果に基づいて試作したスプーンを用いて,施設で働く介護職8名を対象に1回にすくう量について測定し,施設で日常使っているスプーンと比較検討した.
<結果>
1.スプーンボール部の幅は35mmより30mmにおいて,捕食時のスプーン上の相対的残留が有意に少なかった.2.スプーンボール部の深さは5mmより3mmにおいて捕食時のスプーン上の相対的残留が有意に少なく捕食しやすいことが示された.3.介護者がスプーンで1回にすくう量はボール部の形態によって有意に変わった.4.同一介護者がすくう量のばらつき,および介護者間のばらつきが,ボール部形態の工夫によって有意に小さくなった.
これらの結果より,スプーンボール部の形態によって捕食しやすさが変わること,および安定した適切な一口量を介助できる可能性が示唆された.