無歯顎の要介護高齢者45名を対象とし,義歯による安定した顎位の有無を要因として,要介護者に対する歯科衛生士の専門的な口腔のケアが,日常生活自立度 (ADL) や口腔衛生状態に及ぼす効果について調査,検討した結果,以下の知見を得た.
1.ロ腔内状態 対象者の口腔内状態は全て無歯顎であり,義歯による安定した顎位のとれる者 (義歯あり群) が45名中20名 (44.4%),とれない者(義歯なし群)は25名 (55.6%) であった.
2.日常生活自立度 1)「食事」について 完全に自立して食事をしているランク1の者は,介入前には義歯あり群で20名中15名(75.0%),4か月後では17名(85.0%)と非常に多くみられた.一方義歯なし群では,一部介助であるランク3が25名中それぞれ9名 (36.0%),8名 (32.0%) と多くみられた.介入前および4か月後において,義歯あり群と義歯なし群間に有意差がみられた (p<0.05).
2)「コミュニケーション」について 家族でもコミュニケーションを図るのが困難なランク3,あるいは全くコミュニケーションが図れないランク4の者は,介入前には義歯あり群でそれぞれ3名 (15.0%),1名(5.0%),義歯なし群では5名 (20.0%),6名 (24.0%) であり,両群間に有意差がみられた (p<0.05).一方4か月後では,両者ともにランク4の者はみられなくなり,義歯なし群では介入前と4か月後との間に有意差がみられた (p<0.05).
3.ロ腔内所見について 1)「舌苔」について 中等度の舌苔の付着がみられたランク3と多量の付着がみられたランク4の者は,介入前には義歯あり群ではそれぞれ7名 (35.0%),0名,義歯なし群では14名 (56.0%),2名 (8.0%) であった.4か月後では,義歯あり群ではランク3,4の者はそれぞれ0名,1名 (5.0%),義歯なし群ではそれぞれ6名 (24.0%),0名であった.義歯あり群,義歯なし群のどちらにおいても,介入前および4か月後との間に有意差がみられた (p<0.05).