日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
「高齢者ソフト食」摂取者の食事形態と舌圧の関係
津賀 一弘島田 瑞穂黒田 留美子林 亮吉川 峰加佐藤 恭子斎藤 慎恵吉田 光由前田 祐子木田 修赤川 安正
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キーワード: 高齢者, 食事, 舌圧
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2005 年 9 巻 1 号 p. 56-61

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抄録

【目的】高齢者ソフト食は,高齢者においておいしく安全に摂食できるように開発された食事形態である.本研究では,高齢者ソフト食を中心に,要介護高齢者の食事形態と介護に関連すると考えられる全身的な状況ならびに口腔内状況・機能との関係について検討し,安全かつ摂食・嚥下機能維持のために有効な食事形態を客観的な口腔機能評価から決定する可能性を明らかにしょうとした.

【方法】被験者は介護老人保健施設ひむか苑入居者のうち,調査の目的と方法の説明を受けて本人と家族の賛同が得られた,65歳以上の61名(男性17名,女性44名)とした.調査項目はADL,意識レベル,長谷川式簡易知能評価スケール (HDS-R),残存歯ならびに義歯の使用状況,試作簡易舌圧測定装置で測定した最大舌圧および食事形態とした.統計学的解析にはχ2検定ならびに一元配置分散分析を用いた.

【結果】食事形態はソフト食と副食の一部に普通食を食している群 (ソフト+常食群) が50名,すべてソフト食を食している群 (ソフト群) が11名であった.食事形態と年齢,性別,意識レベルおよび口腔内状態との問には有意な関係を認めなかったが,食事形態とADL,HDS-Rならびに最大舌圧の間には有意な関連性を認めた (p<0.05).また,最大舌圧とHDS-Rの問には相関関係がみられた.このことは,舌圧測定時の指示が通らず最大舌圧が低下したと考えられたので,HDS-R 20点以上の被験者について,食事形態と最大舌圧の関係をみたところ,最大舌圧はソフト+常食群は平均20.9 kPa,ソフト群は6.1 kPaとなり,有意な相違があった (p<0.01).以上より最大舌圧が高齢者の食事形態を決定する要因の1つとして考えられる.

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© 2005 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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