2005 年 9 巻 2 号 p. 186-194
本研究は,新たに開発した嚥下障害者用ゼリーの嚥下障害食,訓練食としての適性を検討する目的で実施した.
当院で嚥下造影を行った摂食・嚥下障害患者に日を改めて嚥下内視鏡検査を2回実施し,本ゼリー嚥下時の咽頭を観察し,安全性を評価した.更に,嚥下内視鏡検査の期間内に,本ゼリーを用いて計5回の嚥下直接訓練を実施し,嚥下状態,操作性及び安全性を評価した.また,本ゼリーの嗜好性を対象患者より聴取した.
対象症例は25例で,平均年齢は69.6歳であった.摂食・嚥下障害の臨床的病態重症度分類の内訳は,「食物誤嚥」4例,「水分誤嚥」10例,「機会誤嚥」8例及び「口腔問題」3例であった.訓練中止症例を3例認めたが,本ゼリーの性能の問題による中止症例はなかった.嚥下内視鏡所見では,咽頭残留あるいは喉頭内侵入を認めた症例が存在したが,誤嚥は1例も観察されなかった.直接訓練時にむせ,湿性嗅声を認めた頻度は,それぞれ2.5%及び21.9%であった.また,口腔内停留時間の長さでむせ,湿性頓声の頻度に違いはなく,融解による誤嚥の危険性が低いことを確認した.更に,操作性,食べやすさ,嗜好性においても高い評価を得た.
これらの結果より,本ゼリーは,嚥下障害食及び摂食・嚥下障害者用の直接訓練食として,有用な食品であると考えられた.