【目的】:脳疾患などで急性期に摂食・嚥下障害を併発した患者などに行われる経鼻経管栄養法は,容易に必要な栄養分を摂取できるなどといった利点もあるが,長期のチューブ挿入によってチューブの外壁が汚染され,不顕性誤嚥を起こす患者にとっては誤嚥性肺炎の一要因になりうる.今回われわれは,経鼻経管栄養チューブ交換後のチューブ外壁汚染の程度を細菌学的に検討し,同時に舌苔・咽頭細菌叢との比較・検討を行った.
【対象と方法】:当院脳外科に長期入院中で嚥下障害により経鼻経管栄養チューブ(以下NG-tubeとする)を挿入しており,歯科衛生士による専門的口腔ケアを週5日,日勤帯で行っている患者5名.①旧NG-tube抜去後舌苔及び咽頭壁の細菌培養検査②NG-tube交換から6時間後・3日後・7日後・14日後のNG-tube表面の拭い取りによる細菌培養検査
【結果】:6時間後のNG-tube外壁表面からはすでに多くの菌が検出され,その多くが旧NG-tube抜去後の咽頭壁と極めて類似していた.3日後以降では主としてGram陰性桿菌を中心に6時間後とは別の新たな菌種が検出され,tube表面での菌定着を疑わせる結果が得られた.また時間の経過に伴い,tube表面に定着する菌は種類・量とも増加傾向にあった.比較的意識レベルが良く,口腔ケアにも協力的な患者2名は口腔ケアにより舌苔の菌は比較的良好に抑えられているにも関わらず,NG-tubeでは経時的な菌の増加が認められた.
【考察】:NG-tubeの長期留置は,細菌学的な結果から良好であるとは考えにくいことがいえた.また,NG-tube感染症の治療がtubeを抜去(交換)することでしかないため一定期間の交換が必要であり,しかもその期間はより短期であることが望ましいと考えられた.