抄録
災害時に域外から被災地に投入される資源や技術や規範は、被災地にとって社会再編の契機ともなりうる一方で、地域事情を考慮しない外部からの不適切な介入にもなりうる。2004年インド洋津波被災で国際人道支援の対象となったアチェでは、国際的な人道支援事業とインドネシアに特徴的な「ポスコ」や「レラワン文化」を通じた支援活動が共存する中で、被災前の内戦状況が解消されるとともに、部外者を媒介にして新たな価値観や規範が社会で共有されていった。アチェの事例は、災害対応や復興過程を異なる規範や文化の間の交渉や調整の過程として観察したうえで、地域社会の文化と文脈に照らし合わせてその意味を評価することの重要性を示している。