抄録
本稿は、日本災害復興学会設立10周年事業の1つである「復興とは何かを考える連続ワークショップ」の展開について、あらためて整理することを通して、その成果と課題を明らかにしようとしたものである。本稿では、同企画の内容を、公助・共助・自助の接合部分が災害復興の現場においてどのように紡ぎあげられ、そして、今後どのように考えればよいのかという軸から整理した。その結果として、当事者が、その生活再建について自らの為したいように為す選択肢を権利として法的に保証し、また諸主体によって選択肢を選び取るための支援が広範になされたうえで、理想像としての当事者の意志と、現実としての復興政策のもつ制約条件との間での調整が、政策を変更させる力をもつものとして展開されていく、という形へと、行政・市民・支援者などすべての当事者がそのあり方を変えていくことが、災害復興を進める社会、もしくはいずれ災害の発生が予測されている社会には求められていることを示した。