抄録
症例は, 脳梗塞, 左片麻痺, 腹部大動脈瘤の既往を認める, 62歳の血液透析施行中の男性. 61歳時, 心不全・腎不全のため血液透析導入. 透析導入約6か月後に, 左足趾潰瘍を認めたため入院となった. 画像診断にて, 下肢の動脈の閉塞を認め, 閉塞性動脈硬化症による足趾の潰瘍と診断, 左側膝下切断術を施行した. しかし, 切断した足趾の病理検査にて, 血管内にコレステロールの針状結晶を認め, コレステロール塞栓症の合併も認めた. よって, 透析時の抗凝固薬を低分子ヘパリンから, メシル酸ナファモスタットに変更して退院となった. 維持血液透析患者は, 動脈硬化病変の強い症例が多く, かつ, 透析施行の度に抗凝固薬を投与することから, コレステロール塞栓症の発症・再発のリスクが高いと考えられ, 下肢の末梢循環不全の発症をみたときは, 単純に閉塞性動脈硬化症によるものと判断せず, 本例のようなコレステロール塞栓症の合併も考える必要があると考えられた.