日本透析医学会雑誌
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症例報告
拡散強調MRI画像が肝嚢胞内の感染巣の同定に有用であった維持透析多発性嚢胞腎患者の1例
小河 秀郎近藤 基之平田 邦夫金崎 めぐみ山田 衆坂本 力
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2007 年 40 巻 5 号 p. 435-440

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抄録
症例は71歳の女性. 多発性嚢胞腎のため, 6年前より当院にて維持透析中であった. 2003年8月初旬, 38℃台の発熱, 全身倦怠感, 軽度の右上腹部痛が出現したため, 精査加療目的にて入院. 症状, 血液検査結果より肝胆道系感染症を疑い, 腹部CT, 腹部MRI検査を施行. 腹部CT画像, T1強調画像, T2強調画像ではいずれも多発嚢胞群の中での病巣診断は困難であったが, 拡散強調画像では一部の肝嚢胞内に明らかな高信号域を認めた. sulbactam sodium/cefoperazone sodium (SBT/CPZ) を1g/日投与にて症状は軽快し炎症所見も消退した. これと平行して拡散強調画像の高信号域も消退を認めた. 2003年10月にも同様な症状が出現し, 拡散強調画像にて前回とは異なる肝嚢胞内に高信号域を認め, これも臨床経過とともに消退した. 一般に多発性嚢胞腎における肝腎嚢胞内感染巣の画像検査での同定に関して, 腹部の拡散強調MRI画像が有用であることが示唆され貴重な症例と考えられた.
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© 2007 一般社団法人 日本透析医学会
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