抄録
これまでにわれわれは,白血球系細胞除去療法のうちG-CAPとL-CAPが同様に潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis:UC)の末梢血液中の樹状細胞(dendritic cell:DC)Subset比率に影響を与えることを報告した1).今回,UCで増加する病因細胞をスクリーニングするため,UC症例と健常人で末梢血樹状細胞のサブセット解析を施行した.総樹状細胞(Total DCs)は末梢血有核細胞の4 color FACS解析によりLineage marker(CD3, CD14, CD16, CD19, CD20 and CD56)陰性,かつHLA-DR陽性の細胞として同定され,このTotal DCsはさらにCD11CとCD123の反応性によりDC1,DC2,less differentiated DC:ldDCの各DCサブセットに分類された.末梢血液中のFACS解析の結果,DC SubsetのうちldDCについては吸着療法施行前のUC患者では健常者に比較して有意に増加していた(p<0.03).次にldDCがUCの活動性調節細胞である可能性を検討するため,DC細胞数に影響を与える免疫抑制剤(グルココルチコイド)投与量を一定(30±10mg/body)に保ったうえで白血球系細胞吸着療法(L-CAP 6例,G-CAP 6例)を施行したUC症例12例(男性3例,女性9例)を対象に,各DC Subsetの経時変化を検討した.12例中,瀬尾activity index 50点以上低下が得られた白血球系細胞吸着療法の有効例は8例,残りの4例は無効であった.有効例では治療経過とともにldDCは徐々に減少し,最終回には有意な低下が認められ,健常者と同等レベルまで正常化した.一方,吸着療法の無効例では,ldDCは持続高値のままで有意な変化を認めなかった.一方,DC Subsetのうち総DC数,DC1,DC2はUC患者と健常人の比較で有意差を認めず,吸着療法前後で有意な変化を認めなかった.以上から潰瘍性大腸炎で増加する末梢血液中のldDCは,免疫抑制剤の投与量変更なしで白血球系細胞吸着療法により臨床症状とともに正常化することから,UCの活動性調節細胞である可能性が示された.