日本透析医学会雑誌
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原著
2型糖尿病合併の維持血液透析患者におけるテルミサルタンの糖代謝改善作用
佐々木 敏作丸山 禎之和田 茂
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2009 年 42 巻 4 号 p. 325-331

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抄録
近年アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)は透析患者の降圧治療に広く用いられている.これらARBのうちテルミサルタンは糖代謝に良好な影響を与えるとの報告がいくつかなされているが,いずれの報告も腎障害を合併していない患者を対象としている.そこで,今回われわれは他のARBを内服中の2型糖尿病を合併した維持血液透析患者19名を対象に,そのARBをテルミサルタンに変更し,24週間の糖代謝について検討した.群全体としては随時血糖,HbA1c,血中C-ペプタイドに変化はみられなかった.しかし,HbA1cが6.0%以上の血糖コントロール不良群12名に限定すると,薬剤変更前のHbA1cは7.07±0.22%であったが,テルミサルタン投与後24週後で6.61±0.24%と有意な低下を認めた.同様の血糖コントロール不良群でグリコアルブミン(GA)を検討したところ,変更前26.8±3.87%に対し,変更12週後で24.0±4.68%,24週後で24.2±4.57%と有意に低下した.アディポネクチン濃度にはテルミサルタン投与後有意な変化は認めなかったが,投与後24週の時点でのアディポネクチンの変化率とGAの変化率では負の相関関係がみられた.以上より,コントロール不良の糖尿病を合併した血液透析患者においては,他のARBよりテルミサルタンに変更後,糖代謝の改善が認められ,その効果はPPARγの活性化によるインスリン感受性の上昇による可能性も考えられた.
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© 2009 一般社団法人 日本透析医学会
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