日本透析医学会雑誌
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症例報告
当院におけるcalciphylaxis 3症例についての検討
佐藤 まどか西村 英樹船木 威徳樋口 千惠子塩田 剛章澤田 美月松井 留実子芝田 正道大塚 邦明佐中 孜
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2010 年 43 巻 1 号 p. 77-85

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抄録

Calciphylaxisは,中小動脈壁に石灰化を生じた結果組織の虚血をきたす疾患で,末期腎不全の重篤な合併症の一つとして知られる.急速進行性の組織の潰瘍,壊死をひきおこし,極めて予後不良な病態である.いまだにその発症機序は不明な点が多く,治療法も確立されていない.今回,われわれの施設では3例のcalciphylaxisを経験したため,それぞれの症例の経過を示すとともに,若干の考察を加え,報告する.症例1は66歳,男性,慢性糸球体腎炎による末期腎不全で7年来の腹膜透析中であった.両大腿内側,臀部,腰部,手関節に不整形の有痛性潰瘍が出現し,皮膚生検でcalciphylaxisと診断した.診断後,ビスホスホネート,チオ硫酸ナトリウムの投与などを行ったが,腹膜炎,DICを合併し死亡した.症例2は53歳,女性,糖尿病性腎症による末期腎不全で2年来の血液透析中であった.右下腿に小豆大の潰瘍が出現し,徐々に両側に拡大,激しい疼痛を伴うようになり,皮膚生検でcalciphylaxisと診断した.診断後,高気圧酸素療法を2クール施行し,潰瘍は改善傾向となり,退院した.症例3は72歳,男性,腎硬化症による末期腎不全で2年来の腹膜透析中であった.肺炎に対する入院前後より両下腿,亀頭部に有痛性の皮疹が出現し,皮膚生検でcalciphylaxisと診断した.診断後,高気圧酸素療法などの施行を検討していたが,腹膜炎,DICを合併し死亡した.全例で,プロテインCもしくはプロテインS活性の低下が認められ,二次性副甲状腺機能亢進症に対するビタミンD治療と,心房細動に対するワルファリン治療を施行していた.血清カルシウム値は,正常範囲内で推移していた.ワルファリンについては,ビタミンKの拮抗作用を有することがcalciphylaxisを誘発していると推測され,ワルファリン内服歴が,誘発因子の中で最も重要であると考えた.

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© 2010 一般社団法人 日本透析医学会
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