日本透析医学会雑誌
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症例報告
バスキュラーアクセス感染後の開放創に対し創内持続陰圧洗浄療法が有効であった2例
長谷川 善之玉井 路加子一万田 結香森本 順子和田 至弘斉藤 喬雄
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2010 年 43 巻 2 号 p. 239-244

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抄録

創内持続陰圧洗浄療法とは,創面に密着させた滅菌スポンジに洗浄用のチューブと吸引用のチューブを挿入し,陰圧をかけながら洗浄水を流すことにより感染をコントロールして,創部の肉芽形成を促す治療法である.今回われわれはMRSA感染により吻合部破裂をきたした自己血管シャントの67歳女性と,MRSA感染によりグラフト全抜去した81歳男性の2症例に対して,術後の感染開放創を創内持続陰圧洗浄療法で管理した.これまでバスキュラーアクセス感染後の開放創に対しては連日の洗浄,包交など多大な労力を月単位で要していたが,今回創内持続陰圧洗浄療法を導入することで,かなりの重症例であった2症例ともにわずか4~5週間で感染創を容易に治癒させることができた.創内持続陰圧洗浄療法は身近な道具で簡便かつ安価に作製でき,感染の早期鎮静化,良性肉芽の増生を速やかにもたらすことが可能である.創傷治癒の面からは不利な条件下にある透析患者の感染創に対する新たな治療法として,一考に値すると思われる.

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© 2010 一般社団法人 日本透析医学会
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