日本透析医学会雑誌
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総説
CKD対策 =公衆衛生活動の立場から=
早期腎臓病発見プログラム(KEEP JAPAN)を足がかりとしてグローバル・コラボレーションに向けて
高橋 進
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2011 年 44 巻 2 号 p. 109-121

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抄録

腎臓病早期発見推進機構(IKEAJ)は,いかに早く,CKDを発見し治療を進めていくかということを目指している.早期発見は絶対に必要であるが,残念ながら,言うのは簡単であるが,それを実行することは難しいのが現実であり,さまざまな問題点が指摘されている.まず,だれを選択したらいいか,日本人全員を調べる,これは当然コストの面から不可能であろう.次に,どのような検査がよいのか,検査といっても,全国共通で行うためには,単純かつ簡易なものでなければならず,さらに,効率的に見つけるということも必要である.また,診断基準は当然のことながら,世界的標準のものを用いるべきである.IKEAJは,米国腎臓財団(NKF)による早期腎臓評価プログラム(KEEP)の日本版プログラムを開発し,KEEP JAPANを呼称し,本人に糖尿病や高血圧症の有無,または糖尿病・高血圧症・腎臓病の家族既往症歴の有無のリスク因子のある方を対象に,わが国のCKD発生率およびリスク因子等を検討している.アルブミン-クレアチニン比率と推定糸球体ろ過量(eGFR)によるCKD発生率(ステージ1-4)は26.7%である.糖尿病の参加者の中でのCKD発生率は35.0%,非糖尿病の参加者と比べて1.7倍上回っている.高血圧症の参加者の中でのCKD発生率は34.8%,非高血圧症の参加者と比べて3.4倍上回っていた.CKDの参加者のCVD発生率は28.9%で,非CKD参加者と比べて1.9倍上回っている.糖尿病および高血圧症の既往症歴をもった参加者の38.3%はCVDである.CKD罹患率は従来想像されていたより高い.KEEP JAPNは,本プログラムの目標とされた本質に基づいて,CKDの痕跡がある高リスク集団を明らかにし,これらのデータを基に各国のデータと比較する.世界保健機関(WHO)は戦略の一つとして非感染性疾患(NCD)対策を重要課題とし,フォーカスとなっているのは,CVD,がん,糖尿病,慢性呼吸器疾患であり,これらは密接にタバコ,不健康な食事,運動不足,およびアルコール摂取などの生活習慣共通のリスクの関与が明白となっている.糖尿病やCVDとCKDはその発症や合併症の面などで関連が強いにもかかわらずCKDに対する社会認識はこれらの生活習慣病に比べて低い.しかし,CKDを生活習慣病の仲間といえ,CKDの認知度をグローバルに向上させることが,とりもなおさずCKD対策である.

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© 2011 一般社団法人 日本透析医学会
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