心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
[臨床研究]
大動脈解離発症に関わる外的要因についての検討:身体活動性と気象条件の関与
肥田 親彦蒔田 真司安孫子 明彦中村 元行
著者情報
キーワード: 大動脈解離, 気象, 労作
ジャーナル フリー

2017 年 49 巻 8 号 p. 822-827

詳細
抄録

 目的:これまで大動脈解離の発症に関わる外的要因の検討は少ない.本研究では,当院での急性大動脈解離(AD)症例を対象に,身体活動性や気象要因とAD発症の関連性を検討した.

 方法:2004年1月から2012年12月までのAD259例(Stanford A型106例,B型153例,平均年齢66±13歳)を対象に発症時の身体活動状況を調査した.また,調査期間2923日分の気象情報を気象庁ホームページから入手し,AD発症日の特徴を検討した.

 結果:労作時の発症が安静時より多く(66% vs. 20%),日中の発症が夜間より多かった(62% vs. 36%).また,月別発症件数の比較では秋冬季に多かった.発症日と非発症日の気象情報を比較すると,1日平均海面気圧は1015.6±6.7 hPa vs. 1013.7±7.0 hPa(p<0.01)で発症日に高く,1日平均気温は7.6±8.8℃ vs. 10.9±9.5℃(p<0.01)で発症日に低値だった.10月から3月の秋冬季に発症した例に限定した検討でも同様の結果が得られた.

 結語:ADは秋冬季の低温環境や,高気圧環境で発症しやすく,これには寒冷による循環動態の変化と,高気圧等の好気象条件の日に身体活動性が高まることが関連している可能性がある.

著者関連情報
© 2017 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top