日本透析医学会雑誌
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症例報告
急激な腎機能低下をきたした高齢発症古典的結節性多発動脈炎の1例
松田 潤伊藤 大介森 大輔角谷 裕之村田 尚子竹治 正展山内 淳
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2011 年 44 巻 4 号 p. 307-311

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抄録

症例は79歳の男性.2009年9月発熱,全身倦怠感および食思不振を主訴に近医受診.炎症反応上昇に加え,血清クレアチニン(Cr)2.3mg/dLと腎機能低下を指摘.抗菌薬内服で症状改善なく,1週間後には腎機能が増悪(Cr=14.9mg/dL)したため,精査加療目的に当科紹介.無尿が続き,連日血液透析を施行.右下肺に肺炎像を認め抗菌薬の点滴加療を継続していたが,炎症反応の改善に乏しく,自己免疫性疾患の合併が疑われた.抗好中球細胞質抗体や抗糸球体基底膜抗体などの各種自己抗体は陰性であった.造影CTにて腎動脈分枝の不整な狭小化を認め,腎実質の造影は減弱していた.また空腸動脈末梢の狭窄と同支配域の腸管壁肥厚を認めた.腎生検では糸球体や細・小血管に炎症を示唆する所見なく,高度な尿細管壊死を認めた.以上より古典的結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PN)による腎動脈分枝の血管炎により,虚血性の急性腎不全を呈したと考えられた.ステロイドパルス療法の後,プレドニゾロン(PSL)40mg/日の内服を開始したところ,全身状態は著明に改善し,炎症反応はほぼ陰性化した.透析離脱には至らなかったが,1年後にはPSL 10mg/日まで減量し再発を認めていない.古典的PNで透析を要する急激な腎機能低下をきたすことはまれであり,予後不良で生前診断に至らないことも多いが,本症例では早期診断と治療介入により救命することが可能となった.

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© 2011 一般社団法人 日本透析医学会
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