日本透析医学会雑誌
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症例報告
透析患者に対する緩和治療:終末期心不全合併の1例と考察
辻 博子松井 敏長尾 和浩小野 晋司
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2012 年 45 巻 4 号 p. 375-381

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抄録
わが国における透析患者の死因の第一位は依然として心不全であり,透析患者の高齢化,糖尿病性腎症の増加や多発合併症に伴う重症化により終末期心不全への対応はますます重要となっている.しかしながら本邦において,積極的治療介入が不能なステージの透析患者に対する緩和医療のあり方に,透析中止を含め明確なガイドラインは未だない.われわれは69歳,肥大型心筋症末期の1例に対して,多職種からなる緩和ケアチームの参加を依頼し,包括的に終末期医療を提供する経験をした.チーム医療として取り組み,抗不安薬の使用,透析の中止,植え込み型除細動器の停止,鎮静に至る一連の経過の医学的・倫理的妥当性など,本症例により終末期医療における種々の問題に対峙した.腎不全による使用薬剤の制限,透析中止に関する家人・本人への説明など,透析患者特有の問題も存在した.今後,医療・透析技術の進歩に伴い,このような終末期透析患者はさらに増加すると思われ,透析患者のための緩和治療ガイドライン制定の必要性を示唆する1例と考え報告する.
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© 2012 一般社団法人 日本透析医学会
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