日本透析医学会雑誌
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45 巻, 4 号
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社団法人 日本透析医学会 慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン
原著
  • 村田 弥栄子, 山本 多恵, 大場 郁子, 中道 崇, 中山 恵輔, 太田 一成, 宮澤 恵実子, 清元 秀泰, 上野 誠司, 大友 浩志, ...
    2012 年 45 巻 4 号 p. 357-362
    発行日: 2012/04/28
    公開日: 2012/05/29
    ジャーナル フリー
    2011年3月11日に発生した東日本大震災では,宮城県の広い範囲,特に東部沿岸地域は津波による市街地の流失,電気,上水の供給停止,通信の途絶など,大きな被害を受け,災害拠点病院への救急患者集中,通院手段の確保困難,生活環境の悪化が生じ,被災地外での支援透析を要した.災害支援透析において,被害が大きい依頼側に,通常の臨時透析と同レベルの情報提供を求めることは,災害支援の基本概念に沿わない.また,支援側は,業務増大の中で初診の多数の透析患者の診療を行わなければならないが,過酷な環境から避難してきた透析患者への対応は,平時とは異なる視点が必要となる.そこで,われわれは震災後に多人数の入院支援透析を行うにあたり,災害時透析入院クリニカルパスを作成し使用した.クリニカルパスの運用によって,避難患者の容態把握を共通化,標準化することが可能で,二次避難先への引継ぎにも利用した.過去に例をみない大災害であったが,このクリニカルパスの活用は災害時入院支援透析における診療に有用であったので,ここに報告する.
症例報告
  • 森澤 洋介, 吉田 克法, 望月 裕司, 米田 龍生, 藤本 清秀, 平尾 佳彦, 佐道 俊幸, 小林 浩
    2012 年 45 巻 4 号 p. 363-366
    発行日: 2012/04/28
    公開日: 2012/05/29
    ジャーナル フリー
    Rh(E)式血液型不適合妊娠に対して二重膜濾過血漿交換分離法double filtration plasmapheresis(DFPP)を施行した1例を経験した.症例は33歳,女性,Rh式血液型はccDee,夫はCCDeE.2度の子宮内胎児死亡の既往があり,今回妊娠9週にて抗E抗体512倍と高値であり,妊娠12週2日よりDFPP(計34回)施行した.経過中に高度の胎児貧血を認めたため,5度の臍帯血胎児輸血を施行し,34週3日に予定帝王切開にて女児を出産した.児はNICUにて交換輸血,γグロブリン製剤,光線療法による治療を行ったが,経過良好であるため日齢62日に退院した.血液型不適合妊娠に対しては免疫グロブリン療法(RhIG)の普及,胎児輸血(胎児腹腔内輸血・臍帯血管輸血)の技術の進歩により,母体への血漿交換療法は減ってきている.しかし,今回のように妊娠初期から抗体価が高い場合は,妊娠継続のためには必要な治療でありDFPPは有用であると考える.
  • 山初 あや, 濱田 千江子, 野中 香苗, 佐々木 洋平, 渡邊 智成, 石井 杏理紗, 牧田 侑子, 仲本 宙高, 鈴木 仁, 高原 久嗣 ...
    2012 年 45 巻 4 号 p. 367-373
    発行日: 2012/04/28
    公開日: 2012/05/29
    ジャーナル フリー
    56歳,男性.IgA腎症による慢性腎不全のため,1992年に腹膜透析(PD)を導入した.PDを11年間施行し,2003年難治性腹膜炎の発症を契機に血液透析(HD)に移行した.PD中止後2009年までに軽症のイレウスのため6回の入院歴があるが,数日の絶食で症状が消失する経過や検査所見から被嚢性腹膜硬化症(EPS)の診断には至らず,経過観察を行っていた.PD中止2年目ごろより骨盤内の腹膜石灰化像を認めるようになり,石灰化の範囲が拡大していった.2010年に入りイレウスが頻回となり,12月この年5回目のイレウス症状で入院となった.絶食・補液治療等により速やかに改善するものの,その後もイレウス症状は再発し,短期間に入退院を繰り返すため,他院に紹介となった.EPSと診断され2011年2月腹膜癒着剥離術・小腸部分切除術が行われた.術後の経過は良好で,イレウスの再発は認められていない.本症例の長期間にわたり繰り返されたイレウス症状は,PD中止当初は細菌性腹膜炎による癒着性イレウスが主たる原因であり,2008年以後は骨盤内腸管石灰化を引き金としたEPSによる腸閉塞が原因と考えられた.EPSは発症様式が非常に多彩であり,PD離脱後の進行には注意が必要である.
  • 辻 博子, 松井 敏, 長尾 和浩, 小野 晋司
    2012 年 45 巻 4 号 p. 375-381
    発行日: 2012/04/28
    公開日: 2012/05/29
    ジャーナル フリー
    わが国における透析患者の死因の第一位は依然として心不全であり,透析患者の高齢化,糖尿病性腎症の増加や多発合併症に伴う重症化により終末期心不全への対応はますます重要となっている.しかしながら本邦において,積極的治療介入が不能なステージの透析患者に対する緩和医療のあり方に,透析中止を含め明確なガイドラインは未だない.われわれは69歳,肥大型心筋症末期の1例に対して,多職種からなる緩和ケアチームの参加を依頼し,包括的に終末期医療を提供する経験をした.チーム医療として取り組み,抗不安薬の使用,透析の中止,植え込み型除細動器の停止,鎮静に至る一連の経過の医学的・倫理的妥当性など,本症例により終末期医療における種々の問題に対峙した.腎不全による使用薬剤の制限,透析中止に関する家人・本人への説明など,透析患者特有の問題も存在した.今後,医療・透析技術の進歩に伴い,このような終末期透析患者はさらに増加すると思われ,透析患者のための緩和治療ガイドライン制定の必要性を示唆する1例と考え報告する.
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