日本透析医学会雑誌
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症例報告
回腸末端部の石灰化が進行し,腹膜透析離脱5年後に被嚢性腹膜硬化症を発症した1症例
山初 あや濱田 千江子野中 香苗佐々木 洋平渡邊 智成石井 杏理紗牧田 侑子仲本 宙高鈴木 仁高原 久嗣井尾 浩章金子 佳代堀越 哲室谷 典義富野 康日己
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2012 年 45 巻 4 号 p. 367-373

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抄録
56歳,男性.IgA腎症による慢性腎不全のため,1992年に腹膜透析(PD)を導入した.PDを11年間施行し,2003年難治性腹膜炎の発症を契機に血液透析(HD)に移行した.PD中止後2009年までに軽症のイレウスのため6回の入院歴があるが,数日の絶食で症状が消失する経過や検査所見から被嚢性腹膜硬化症(EPS)の診断には至らず,経過観察を行っていた.PD中止2年目ごろより骨盤内の腹膜石灰化像を認めるようになり,石灰化の範囲が拡大していった.2010年に入りイレウスが頻回となり,12月この年5回目のイレウス症状で入院となった.絶食・補液治療等により速やかに改善するものの,その後もイレウス症状は再発し,短期間に入退院を繰り返すため,他院に紹介となった.EPSと診断され2011年2月腹膜癒着剥離術・小腸部分切除術が行われた.術後の経過は良好で,イレウスの再発は認められていない.本症例の長期間にわたり繰り返されたイレウス症状は,PD中止当初は細菌性腹膜炎による癒着性イレウスが主たる原因であり,2008年以後は骨盤内腸管石灰化を引き金としたEPSによる腸閉塞が原因と考えられた.EPSは発症様式が非常に多彩であり,PD離脱後の進行には注意が必要である.
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© 2012 一般社団法人 日本透析医学会
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