日本透析医学会雑誌
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症例報告
軽快増悪を繰り返す難治性下腿浮腫を呈し, 左側臥位CT撮影により囊胞性下大静脈圧排と判明した多発性囊胞腎の1例
吉岡 和香子森 崇寧諏訪部 達也高橋 大栄萬代 新太郎平井 俊行安芸 昇太青柳 誠田中 啓之田村 禎一
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2014 年 47 巻 5 号 p. 323-328

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抄録

 74歳, 女性. 常染色体優性多発性囊胞腎 (ADPKD) を原疾患とする慢性腎不全患者で, 6年の血液透析歴を有する. 数か月の経過で徐々に増悪する両下腿浮腫を認め, 入院精査を行った. ドライウェイトは適正範囲にあり, 心機能および肝機能に問題はなく, 下肢静脈ドップラー検査や造影CT検査でも深部静脈血栓や囊胞性下大静脈圧排を認めなかった. 浮腫の原因は不明であったが, 入院後安静臥床で比較的速やかに軽快したため, 以後は外来経過観察の方針とした. しかし退院後約1週間の経過で浮腫を再度認めるようになり, 再精査目的に再入院した. 立位でいる時間が長いほど増悪することや入院中は右側臥位, 自宅では左側臥位をとることが多かったというエピソードより, 浮腫の背景には体位に伴う増悪因子の存在が示唆された. 自宅安静時と同じ左側臥位でCT撮影を行ったところ, 右腎囊胞が下大静脈 (IVC) を完全に圧排した所見を得, 浮腫の直接的原因と考えられた. 残腎機能がほぼ廃絶していることを確認し, 右腎動脈塞栓術を施行した. 以後下腿浮腫は完全に消失し3年間再発を認めていない. ADPKDに関連したIVC圧排は少なからず合併している可能性があり, 下腿浮腫のみならず深部静脈血栓症の報告も散見される. 本症例は左側臥位でCTを撮影することにより, 通常の仰臥位撮影では診断し得なかった囊胞性下大静脈圧排の所見を得, 治療介入することができた. 囊胞性下大静脈圧排を比較的早期に診断する手段として左側臥位CT撮影が有効である可能性があり, ここに報告する.

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© 2014 一般社団法人 日本透析医学会
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