2015 年 48 巻 10 号 p. 605-610
症例は48歳, 男性. 糖尿病性腎症による末期腎不全で, 平成2X年4月上旬に血液透析 (HD) を導入された. 導入直後より39°C台の発熱を認めたが原因不明で, 抗生物質による改善より細菌性感染と考えた. 以後, 近医でHDを施行していたが, 8月下旬に嘔吐があり腹部腫瘤を指摘され, 再度精査加療の目的で入院となった. 画像検査上, 腹腔内小腸周囲に12×5×8cmの被膜を有する囊胞性腫瘤を認めた. 手術所見は腹膜の癒着と臓側・壁側腹膜に充実性腫瘤を多数認め, 腫瘤自体は癒着が強く切除不能であった. 進行性の悪性軟部腫瘍と考えられたが, 他臓器の病変は認めなかった. 病理組織所見では, 高度の好中球・マクロファージの浸潤, 巨細胞状の多核細胞を散見し核の多形性を認めた. 免疫染色では, 特異的マーカーは陰性であった. 以上より, 炎症性悪性線維性組織球腫と診断された. 透析症例における本疾患については既報がなく, 貴重な症例と考え報告する.