日本透析医学会雑誌
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症例報告
両心房内巨大血栓を合併した腎梗塞の1例
吉田 衣江奥野 良樹髙橋 延行大宮 美香辻 みゆき土手 絹子楊 培慧諏訪 惠信妹尾 健高山 康夫
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2016 年 49 巻 3 号 p. 261-266

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抄録

症例は80歳女性. 左腰背部痛, 心窩部痛, 嘔吐, 下痢を主訴に来院し, 急性胃腸炎を疑われて入院となった. 入院後から無尿となり, 急性腎障害, うっ血性心不全を認めたため, 血液透析を開始した. 血液検査ではLD値が2,270U/Lまで上昇, 慢性心房細動があり心臓超音波検査で両心房内に巨大血栓像 (左房42×26mm, 右房21×17mm) を認めたことから腎梗塞を疑い, 腹部造影CTを施行した. その結果, 左腎に多数の造影欠損域を認め腎梗塞と診断した. 血液透析によってうっ血性心不全は改善したが, 腎梗塞, 心房内血栓に対し抗凝固療法を開始したものの, 元来片腎であったため腎機能は改善せず無尿が持続し, 維持透析が必要となった. その後も長期間抗凝固療法を継続し, 新たな塞栓所見は認めなかったが両心房内血栓は縮小せず経過した. 本症例は巨大心房内血栓が原因となって発症した腎梗塞と思われ比較的まれな症例と考えられる.

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© 2016 一般社団法人 日本透析医学会
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