日本透析医学会雑誌
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症例報告
循環血液量の急速な回復がみられたナファモスタットメシル酸塩によるアナフィラキシーの1血液透析症例
安藤 誠福島 正樹森 拓人島田 典明浅野 健一郎
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2016 年 49 巻 6 号 p. 413-418

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抄録

症例は52歳の男性血液透析 (HD) 患者. Dry weight評価の目的でCRIT-LINE®による循環血液量変化率 (%BV) を測定していた. 術前にナファモスタットメシル酸塩 (NM) を用いてHDを行ったところ, 開始5分後にシャント肢の熱感, 全身の痒みと発赤, 結膜の充血を認めた. %BVは15分で−16.8%まで急激に低下したが, ショック症状はきたさなかった. 生理食塩水を100mL注入してHDを一時中断した後, ヘパリンでHDを再開することで症状は改善した. 除水再開1.5時間で%BVはHD開始時の値に回復し, 2時間後に+20%の急峻な上昇を認めた. NM特異的IgE抗体が陽性であり, NMによるアナフィラキシーと考えられた. 体液量過剰であった本症例はショック症状をきたさず, アナフィラキシーに伴う循環血液量の急激な低下とその後の急速な回復を認め, HD患者特有の体液量の状態と分布の変動の関与が示唆された.

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© 2016 一般社団法人 日本透析医学会
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