日本透析医学会雑誌
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委員会報告
透析施設のHIV感染者受け入れ状況―感染調査小委員会のアンケート調査から―
吉藤 歩竜崎 崇和伊藤 恭彦大曲 貴夫菅野 義彦篠田 俊雄高野 八百子塚本 功洞 和彦中澤 靖長谷川 直樹吉田 理脇野 修武本 佳昭中元 秀友
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2018 年 51 巻 10 号 p. 577-584

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抄録

2016年8月の新聞記事にて, 人工透析が必要なヒト免疫不全ウイルス (HIV) 感染者が約40の医療機関から透析を拒否されたことが報道された. 日本透析医学会感染調査小委員会ではこの実態を調査するため, アンケート調査を行った. 4,039施設に送付し, 2,583施設 (64.0%) から回答を得た. 過去5年間にHIV感染者の透析受け入れの要請があった施設は215施設 (8.3%) で, そのうち受け入れを 「断った」 施設が40.1%存在した. 受け入れた施設の96.6%で針刺し事故マニュアルが存在したが, 抗HIV薬の院内常備がない施設は51.1%, HIV拠点病院との連携は59.6%にとどまった. 受け入れを 「断る」 理由として, HIV感染者の診察経験の欠如, スタッフのHIV感染リスクについての不安, 針刺し事故に対する常備薬の不足, HIV拠点病院との連携の欠如などがあげられた. 今後のHIV感染者の受け入れ予定施設は全回答施設中の16.9%と低かった. 今後, 日本透析医学会は, 他学会と連携を強化し, HIVに対する基礎知識や感染対策の普及をはかり, HIV感染者の維持透析受け入れ体制の整備を進めていく必要がある.

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© 2018 一般社団法人 日本透析医学会
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