2019 年 52 巻 2 号 p. 109-114
症例は67歳男性. 64歳時より糖尿病性腎症で維持血液透析を行われていた. 脱力・意識障害の精査加療目的に入院した. 入院後発熱はなく症状も自然軽快傾向であったが, CRP弱陽性が持続した. 原因検索目的に施行した心臓超音波検査にて僧帽弁に新規の疣贅を認めたが, 血液培養は複数回陰性が続いたため血液培養陰性感染性心内膜炎を疑った. 猫咬傷の病歴がありBartonella henselae IgG抗体を提出したところ高値が判明, バルトネラ属による感染性心内膜炎と考えた. その後セフォタキシムによる治療にて改善が得られた. バルトネラ属は血液培養陰性感染性心内膜炎の起因菌となるが, 培養困難であるため診断に至らないケースも多い. 本症例から, 発熱なく全身状態が安定している透析患者においても, 炎症所見が持続する場合は鑑別としてバルトネラ属による血液培養陰性感染性心内膜炎を考慮する必要があることが示唆された.