透析患者にカルニチンを使用したとき, ATP産生過程でカルニチンの効果に差が出てくる. ミトコンドリア内に輸送された脂肪酸にカルニチンが関与するのはアシルCoAまでであり, β酸化とTCAサイクルでは透析で除去されやすい水溶性ビタミンが必要になる. さらに呼吸鎖ではCoQ10が必要になるが, スタチン内服でCoQ10生成は阻害される. 貧血の場合にも, 造血過程ではカルニチン以外にも多くの因子を調整する必要がある. また, こむら返りの発症にはアルカローシスが関与するが, 透析では濃縮性アルカローシスも相加している. アルカローシスでは筋小胞体からCaイオンが放出し筋攣縮がおきる. 筋小胞体はATPを分解しながらカルシウムを取り戻すため収縮は続かないが, カルニチン欠乏があるとATP不足となり筋収縮が続く. このように, カルニチンがどの部分に関与しているかを知ることで, より有効にカルニチンを使用できると思われる.