2019 年 52 巻 5 号 p. 281-284
血液透析患者41名にガス分析検査, 生化学検査でNa, K, Clを同時測定しその差を検討した. 【結果】生化学, ガス分析それぞれNaは138.3, 137.0, Kは4.67, 4.47, Clは105.6, 107.5mEq/Lで, ガス分析は生化学に比べNa, Kは低く, Clは高かった (p<0.0001). 生化学Naとガス分析Naの差 (⊿Na) は, TPが低いと増大した (p=0.0002). ⊿Clは, HCO3が低いと拡大した (p=0.013). 【考察】電解質は, イオン選択電極 (ISE), 生化学は間接法, ガス分析は直接法で測定され, 血清中の固形成分により間接法・直接法間に差が生じる. Cl ISEは溶液中の陰イオンに影響を受け, 直接法全血に存在するHCO3に比べ間接法血清はわずかのため生化学Clは低くなる. TPが低いと⊿Naが増大, HCO3が低いと⊿Clが拡大したのは, 電解質測定標準液に正常量の蛋白やHCO3が含まれるためと考えられた. 【結論】生化学・ガス分析でのNa, K, Cl測定差は, 前者は血清ISE間接法, 後者は全血直接法で測定されることによると考えられた.