2021 年 54 巻 10 号 p. 541-546
尿毒症性心膜炎の治療として透析療法が報告されているが,その際の除水の必要性については検討されていない.今回無除水血液透析を行い,多量の心囊液が消失した症例を経験した.血液透析導入時の67歳患者に無症候性の心囊液貯留を確認し,尿毒症性心膜炎と診断した.無除水血液透析を継続したところ,心囊液は消失した.多量の心囊液を有する尿毒症性心膜炎例においても,無除水透析のみで心囊液は改善する可能性があり,除水を契機にlow pressure cardiac tamponadeとして循環動態が破綻する危険性も考慮すると,過剰な除水は尿毒症性心膜炎の治療においては不要と思われる.