88歳,女性.4年前肝細胞癌のため肝動脈化学塞栓術が施行された.夜間呼吸苦,全身浮腫,著明な高血圧のため入院となった.Cr 6.43 mg/dL,血漿ノルアドレナリン1,173 pg/mL,CTで右副腎腫瘤と著明な胸腹水,心囊液貯留を認め,心エコーで左室駆出率が保持された心タンポナーデであった.透析で除水を行ったが高血圧が持続し,著しい甲状腺機能低下症の合併が判明したため,レボチロキシン投与を開始した.透析除水に加えレボチロキシン投与により,心囊液貯留が軽減し,血圧は正常化し,血漿ノルアドレナリンも205 pg/mLと正常値となった.透析導入時に心囊液貯留を認めた際は甲状腺機能低下も念頭におき,甲状腺機能を評価すべきである.