日本透析医学会雑誌
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総説
透析患者におけるセレン欠乏症の臨床的意義
水口 斉脇野 修川合 徹菅野 義彦熊谷 裕生児玉 浩子藤島 洋介松永 智仁吉田 博
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2021 年 54 巻 5 号 p. 191-201

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抄録

セレン(selenium)は必須微量元素であり,セレノシステイン,セレノメチオニンとしてセレン含有たんぱく内に組み込まれセレン含有たんぱくとして作用を発揮する.セレン欠乏症では心機能低下,動脈硬化,感染症,甲状腺機能低下,皮膚症状,筋肉症状が認められる.セレン欠乏症は長期静脈栄養・経腸栄養剤を用いる患者において重要であり,2018年セレン欠乏症の診療指針が策定された.透析患者にもセレン欠乏症が認められ,血清セレン低値は死亡と関連し,特に本邦のKAREN研究では感染症死と関連があることが報告されている.その一方で透析患者への介入研究はこれまで報告が少なく,栄養状態の改善のみが報告されている.セレン欠乏は透析患者の2大死因である感染症と心血管病にかかわる可能性があり,今後透析患者における基準値の策定および治療介入の可能性も検討すべきである.

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© 2021 一般社団法人 日本透析医学会
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