2023 年 56 巻 1 号 p. 29-36
症例は,70歳代女性.X-3年,血液透析導入時にPT 11.7秒,APTT 24.3秒であった.X-1年10月,胃毛細血管拡張症を発症後,透析時にナファモスタットメシル酸塩を使用された.X年2月,発熱・咳嗽に対し抗菌薬を投与されたが改善せず,当院へ入院した.肺炎に加え,凝固能異常(PT 54.4秒,APTT 215.6秒)を認めた.第V因子活性は著明に低下し,血中から第Ⅴ因子インヒビターと抗第V因子自己抗体が検出され,自己免疫性後天性凝固第V因子欠乏症と診断した.入院第33病日,右側頭葉出血を発症し,濃厚血小板200 mLを輸血,第34病日よりPSL 20 mg/day内服を開始した.第37病日にPT 11.3秒,APTT 18.9秒に短縮,第57病日には第Ⅴ因子インヒビターは陰性化し,第82病日に退院した.本疾患は非常に稀であるが,時に重篤な出血症状をきたす恐れがあり,適切な診断や治療適応の評価が重要である.透析患者で凝固能異常を認めた場合は,本疾患を念頭に置き,速やかに出血症状を評価し,精査する必要がある.