日本透析医学会雑誌
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56 巻, 1 号
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報告
  • 松岡 友実, 五十嵐 公嘉, 齋藤 智之, 高田 希望, 橋本 玲奈, 一條 聖美, 小林 悠, 田中 裕也, 川本 俊輔, 宮里 紘太, ...
    原稿種別: 報告
    2023 年 56 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/28
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において透析患者は重症化リスクが高く,COVID-19流行初期は,原則として全例入院加療で対応していた.しかし,東京都においては受け入れ可能な入院施設は限定され,新規陽性患者数の急増により,入院調整が困難な状況に陥っていた.そのため,東京都は2021年12月中旬に透析患者の受け入れが可能なCOVID-19透析患者の収容施設として,旧赤羽中央総合病院跡地を活用した酸素・医療提供ステーション(東京都酸素ステーション)を開設した.2022年1月1日~8月31日まで,酸素ステーションで受け入れたCOVID-19透析患者の現況を報告する.入所患者は211人,平均年齢は65歳,転帰は,自宅退院194例(92%),転院16例(7.5%)(そのうち肺炎の疑い13例(6.1%)),死亡1例(0.5%)であった.当施設は東京都のCOVID-19透析患者の入院待機者数の減少および病床ひっ迫の緩和の機能を果たし,また,治療の介入により重症化や入院を予防しており,施設の運用は有効であった.

透析技術
  • 神山 匠, 山口 剛史, 野澤 佑介, 有坂 安弘, 藤原 信里, 赤木 翔, 小山田 諒, 金子 義郎, 佐々木 祐実, 合田 貴信, 村 ...
    原稿種別: 透析技術
    2023 年 56 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/28
    ジャーナル フリー

    【背景・目的】血液透析中のトラブルの一つに透析回路の血液凝固がある.血液と空気の接触により凝固系が活性化され血栓を形成し凝固することが一因と考えられている.エアフリーチャンバとダイアフラム型圧力測定ポットを導入した透析回路「アーチループ」(AL)は従来型回路と比べ血液と空気の接触面積低減とプライミングボリューム低減という特徴を持つ.この回路の抗凝固特性を従来型回路と比較検討した.【対象・方法】当院通院中の維持透析患者12名を対象に,ALおよび従来型回路を用いて透析を同条件下で行い,透析開始3時間後の活性化凝固時間(activated clotting time:ACT)を測定し,両群で比較検討した.【結果】ACTは,従来型回路と比べALで有意に延長した(165.1±19.0 vs 153.2±15.2秒,p=0.002).止血不良などの出血傾向増強も認めなかった.【結論】アーチループ回路により回路内凝血の減少が期待できるがその効果はまだ限定的で汎用にはさらなる改良が望まれる.

症例報告
  • 竹内 和博, 和田 幸寛, 内田 満美子, 鎌田 貢壽, 竹内 康雄
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/28
    ジャーナル フリー

    症例は82歳男性.2年前に糖尿病性腎臓病による慢性腎不全で血液透析導入となり,1年前血管炎による肺出血の疑いでステロイド治療が開始されていた.2週間前から発熱と心窩部痛を自覚し,胸背部痛も出現し入院.CT検査にて気腫性胆囊炎と総胆管結石,胸部大動脈に感染性仮性動脈瘤を認め,抗菌薬を投与するも,敗血症性ショックを呈し,第2病日よりエンドトキシン吸着療法(polymyxin B immobilized fiber column direct hemoperfusion:PMX-DHP)を施行した.血液培養からClostridium perfringensが検出されたが,吸着療法は奏効し,第16病日に内視鏡的胆管ドレナージを施行.仮性動脈瘤が増大したため,第28病日に血管内ステントグラフトを挿入し,第77病日に退院した.易感染宿主における本感染症の生命予後は不良とされる.本例は免疫抑制下高齢維持透析患者であったが,PMX-DHPと血管内ステント挿入を効果的に施行して救命し得ており,貴重な症例と考え報告する.

  • 須藤 佑太, 関根 芳岳, 羽鳥 基明, 野村 昌史, 新井 誠二, 宮澤 慶行, 齋藤 智美, 大津 晃, 岡 大祐, 根井 翼, 澤田 ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/28
    ジャーナル フリー

    放射線照射後は組織の癒着や血流不全などの晩期影響により,周術期に出血や縫合不全などが起こりやすいことが知られている.われわれは34年前に卵巣腫瘍に対して全骨盤照射を行った患者に対して生体腎移植を施行した1例を経験した.術前検査のCTでは,吻合に使用する内腸骨動脈や外腸骨静脈の狭窄や壁肥厚および石灰化,周囲組織の癒着などの異常は指摘されなかった.生体腎移植施行後,血管吻合不全や血管吻合部狭窄などは認めなかったが,術後7日目に膀胱留置カテーテルを抜去後,移植尿管膀胱吻合不全による尿漏が生じたため,移植腎周囲へ経皮的ドレナージチューブを留置した.手術時に留置した移植尿管ステントに加え,膀胱に尿道カテーテルを長期間留置することで,吻合部からの尿漏は消失し,感染症などの合併症なく保存的に治療しえた.移植尿管膀胱吻合不全の治療として,尿路の減圧を行うことが,効果的だったことが考えられた.

  • 近藤 晃, 三宮 彰仁, 春口 和樹, 蜂須賀 健, 川瀬 友則, 小山 一郎, 中島 一朗
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/28
    ジャーナル フリー

    われわれは以前,過剰血流シャントに対する血流制御手術の方法として,グラフトcovering法(graft covering technique:GCT)を考案し報告した.それらは前腕内シャントに対して行ったものであるが,今回われわれは上腕内シャントの過剰血流に対してGCTを試みたので報告する.症例は70歳女性で,上腕動脈表在化および撓側皮静脈との内シャント設置術後3年が経過し,シャント血管痛と過剰血流を認めたためGCTを施行した.既存の内シャントを閉鎖,シャント静脈を剥離,短切した人工血管グラフト(Graft)の中に剥離した静脈を挿入(covering),その状態で内シャント再建術を行い,グラフトと吻合部を数か所縫合して固定した.術後血管痛は消失し,上腕動脈血流量は1,910 mL/minから1,046 mL/minへと低下した.中枢での再建となったが,脱血・返血ともにシャント静脈に穿刺可能であった.上腕内シャントの過剰血流に対してもGCTは試みる価値があると思われた.

  • 石坂 真菜, 遠藤 俊祐, 玉井 亨, 倉田 多鶴子, 寺﨑 靖, 大田 聡, 石田 陽一, 朝倉 英策, 家子 正裕, 一瀬 白帝
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/28
    ジャーナル フリー

    症例は,70歳代女性.X-3年,血液透析導入時にPT 11.7秒,APTT 24.3秒であった.X-1年10月,胃毛細血管拡張症を発症後,透析時にナファモスタットメシル酸塩を使用された.X年2月,発熱・咳嗽に対し抗菌薬を投与されたが改善せず,当院へ入院した.肺炎に加え,凝固能異常(PT 54.4秒,APTT 215.6秒)を認めた.第V因子活性は著明に低下し,血中から第Ⅴ因子インヒビターと抗第V因子自己抗体が検出され,自己免疫性後天性凝固第V因子欠乏症と診断した.入院第33病日,右側頭葉出血を発症し,濃厚血小板200 mLを輸血,第34病日よりPSL 20 mg/day内服を開始した.第37病日にPT 11.3秒,APTT 18.9秒に短縮,第57病日には第Ⅴ因子インヒビターは陰性化し,第82病日に退院した.本疾患は非常に稀であるが,時に重篤な出血症状をきたす恐れがあり,適切な診断や治療適応の評価が重要である.透析患者で凝固能異常を認めた場合は,本疾患を念頭に置き,速やかに出血症状を評価し,精査する必要がある.

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