2023 年 56 巻 6 号 p. 205-213
透析患者では,非閉塞性腸管虚血(NOMI)の発症頻度が高く予後不良である.NOMIの発症には直接的な誘因が不明な場合も多い.これらの患者の臨床的特徴を明らかにし発症との関連を検討した.NOMIを発症した19例を,直接的な誘因(心臓手術,心原性・出血性ショック)があるA群(9例)と,不明のB群(10例)に分けた.B群ではAPACHEⅡスコアが低値であったが,動脈硬化性疾患の既往が多い傾向にあり,死亡率は同等であった(A群;77.8%,B群;60%,p=0.63).また,エリスロポエチン(ESAs)使用量が多く(7,000 vs 3,000 U/週,p=0.015),エリスロポエチン抵抗性指数も高い傾向にあった(12.9 vs 4.3 U/kg/g/dL,p=0.058).さらに,発症時の体重減少,ヘマトクリットの上昇傾向がみられた.直接的な誘因がないNOMI症例でも死亡率は高く,組織低灌流の素地に加え,動脈硬化のみならずESAs投与量や抵抗性,循環血漿量減少および血液粘度上昇による腸管膜血流低下がNOMI発症に関与する可能性が推察された.