日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
56 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 高野 敬佑, 平井 太郎, 原 裕樹, 三宅 晃弘, 遠藤 慶太, 坂井 正弘, 吉野 かえで, 北村 浩一, 冠城 徳子, 林 晃一, 鈴 ...
    原稿種別: 原著
    2023 年 56 巻 6 号 p. 205-213
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/28
    ジャーナル フリー

    透析患者では,非閉塞性腸管虚血(NOMI)の発症頻度が高く予後不良である.NOMIの発症には直接的な誘因が不明な場合も多い.これらの患者の臨床的特徴を明らかにし発症との関連を検討した.NOMIを発症した19例を,直接的な誘因(心臓手術,心原性・出血性ショック)があるA群(9例)と,不明のB群(10例)に分けた.B群ではAPACHEⅡスコアが低値であったが,動脈硬化性疾患の既往が多い傾向にあり,死亡率は同等であった(A群;77.8%,B群;60%,p=0.63).また,エリスロポエチン(ESAs)使用量が多く(7,000 vs 3,000 U/週,p=0.015),エリスロポエチン抵抗性指数も高い傾向にあった(12.9 vs 4.3 U/kg/g/dL,p=0.058).さらに,発症時の体重減少,ヘマトクリットの上昇傾向がみられた.直接的な誘因がないNOMI症例でも死亡率は高く,組織低灌流の素地に加え,動脈硬化のみならずESAs投与量や抵抗性,循環血漿量減少および血液粘度上昇による腸管膜血流低下がNOMI発症に関与する可能性が推察された.

  • 吉田 真貴, 増田 美沙季, 押川 泰士, 櫻井 則之, 針谷 貴子, 小畑 敬子, 吉田 弘明, 小林 さつき, 松本 孝之, 植木 嘉衛
    原稿種別: 原著
    2023 年 56 巻 6 号 p. 215-224
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/28
    ジャーナル フリー

    【目的】エテルカルセチド(E)からウパシカルセト(U)へ切り替える際の安全性と有効性を評価する.【方法】EからU 25μgへ切り替えを行った二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)治療中の透析患者90例をE投与量で4群に分けて後ろ向きに評価した.【結果】切り替え後,高用量群(E 7.5~10mg),超高用量群(E 15mg)において,血清Whole(W)-PTH,補正Ca値の上昇を認め,その後,Uの増量に伴い切り替え前値まで低下した.48週後の血清W-PTH達成率は4群とも切り替え前値以上となった.低Ca血症などの有害事象の発現は認めなかった.【結語】EにてSHPT治療中の透析患者において,U 25μgへの切り替えを行ったところ,安全性,有効性に特段の問題を生じなかった.しかし,とくに,Eが7.5mg以上投与されている患者を切り替える際には,血清W-PTH,補正Ca値が一過性に上昇する可能性に留意する必要がある.

  • 浅野 貞美, 山口 智晴, 森本 耕吉, 諸遊 直子, 藤岡 佳伸, 谷島 薫, 川上 愛, 後藤 健
    原稿種別: 原著
    2023 年 56 巻 6 号 p. 225-231
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/28
    ジャーナル フリー

    血液透析患者が透析療法を継続するためには,注意・遂行機能を維持することが必要である.血液透析患者は認知機能障害の罹患率が高いが,認知機能の一部である注意・遂行機能の実態や地域在住高齢者との差異,認知機能と関連が認められている握力や下肢機能,骨格筋量との関連性については十分に検証されていない.そこで本研究は,血液透析患者32名と地域在住高齢者31名を対象に,trail making test part B(TMT-B)を用いて,注意・遂行機能の実態を比較検討した.また血液透析患者における筋力や骨格筋量と注意・遂行機能との関連性を検証した.その結果,血液透析患者のTMT-Bの所要時間は,地域住民と比較して有意に長く,血液透析患者は注意・遂行機能の低下リスクが高いことが示唆された.またTMT-Bと握力,SMIに有意な負の相関が認められた.今後は縦断研究により,注意・遂行機能と握力,骨格筋量との関連性やTMT-Bが臨床的に有用な指標となるのかを検討することが必要である.

症例報告
  • 片桐 勇貴, 竹之内 豪, 山﨑 和正, 畑中 憲行, 古賀 智典, 上田 高士, 三澤 学, 吉田 祐一, 山崎 誠治
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 6 号 p. 233-242
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/28
    ジャーナル フリー

    大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル的大動脈弁植込術(TAVI)を透析用シャント肢と同側の鎖骨下動脈アプローチを用いて行った4例を報告する.症例は70~79歳,左上肢に透析用シャントが作成されていた.いずれも大動脈弁置換術は髙リスク(STSスコア6.292~12.624)と考えられ,TAVIを行うこととなった.腸骨動脈の狭窄・石灰化もしくは総大腿動脈の高度石灰化のため,左鎖骨下動脈アプローチを選択した.術前大動脈弁圧較差は30.2~44.2mmHgであったが,術後3.0~5.8mmHgへと減少した.いずれの症例でも術後透析は問題なく行うことができ,シャント不全は認めなかった.透析患者では末梢血管疾患の合併が多く,大腿動脈アプローチが困難であることが少なくない.しかし,透析用シャント肢と同側の鎖骨下動脈アプローチの安全性について十分なデータは存在しない.自験例では術後透析経過に問題なく,TAVI時のアプローチサイトとして安全に使用できる可能性が示唆された.

  • 雨宮 伸幸, 水谷 美保子, 梨本 友美, 川口 絢美, 岩谷 洋介, 能木場 宏彦, 山﨑 麻由子, 杉浦 秀和
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 6 号 p. 243-249
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/28
    ジャーナル フリー

    腹膜透析(PD)関連腹膜炎はPD患者にとって重要な合併症であり,セファロスポリン系抗菌薬は初期治療に選択され得る薬剤である.86歳女性,腎硬化症による慢性腎臓病のためPDを導入.PD導入5か月後に細菌性腹膜炎を発症し,セファゾリン(CEZ)1g,セフェピム(CFPM)1g/日の腹腔内投与を開始した.腹膜炎は改善傾向となるも第5病日から意識障害が出現した.頭部MRIで原因となる異常を認めず,脳波検査で三相波を認め,抗菌薬関連脳症(AAE)が疑われた.第5病日CEZ中止,第6病日CFPMをメロペネムに変更し,意識障害は徐々に改善し第16病日には清明となり,第29病日に退院した.PD患者に発症したAAEの報告は限られており,さらに推奨される腹腔内投与量でのAAEの既報はない.しかし,PD患者ではCFPMの除去効率は悪く,用量を調節し腹腔内投与を行った場合でもAAEには注意が必要である.

令和4年度コメディカル研究助成報告
feedback
Top