2023 年 56 巻 7 号 p. 283-287
症例は48歳男性,3年前より左前腕内シャントに瘤を認め,長径55mmに増大し当院紹介となった.瘤切除や形成術は創が大きく,人工血管置換術は吻合部狭窄が懸念されたため,「吹き流し法」を応用した人工血管内挿術を行った.瘤の前後に約2cmの切開をおきシャント静脈を確保して瘤の虚脱を確認した.滅菌ゼリーを塗布した外筒式トンネラーを半周切開した流入血管から挿入し,エコーガイド下に瘤内を誘導,流出血管内に到達させた後,流出血管を半周切開してトンネラーを血管外に誘導した.トンネラーの外筒内に5mmの人工血管を挿入し,外筒を抜去して瘤を跨ぐように静脈内に留置し,両端をトリミングして断端を静脈壁に固定するように縫合,閉鎖した.スリルは良好で瘤の再膨隆がないことを確認し手術を終了した.術後2年半が経過し吻合部狭窄や瘤の再発は認めていない.本術式は2か所の小切開のみで端々吻合を必要としない簡便な根治術である.