日本透析医学会雑誌
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56 巻, 7 号
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症例報告
  • 川崎 創, 渡邉 周平, 藤澤 由佳, 平井 俊行, 金井 大輔, 西願 まどか, 隈元 宣行, 原 明子, 瀧口 梨愛, 西 慎一
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 7 号 p. 263-270
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル フリー

    症例1は58歳女性.血液透析歴は8年.入院5日前からの発熱と右肩痛を主訴に受診しメチシリン感受性黄色ブドウ球菌菌血症および右胸鎖関節炎を認めた.抗菌薬治療を開始したが肩痛は増悪し,第37病日に実施したMRIで右鎖骨骨髄炎と診断した.第66病日に手術目的に高次医療機関へ転院となった.症例2は83歳男性.血液透析歴は6年.入院3か月前に内シャント感染ならびにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)菌血症を認め,内シャント感染巣除去術ならびに血液培養陰性化確認後から4週間の抗菌薬治療により症状の改善を得たが,抗菌薬終了2週間後より炎症反応の上昇あり,血液培養で再度MRSAの発育あり,造影CTで縦隔膿瘍を認めた.縦隔ドレナージおよび抗菌薬治療を行うも改善に乏しく,第17病日に永眠した.透析患者の黄色ブドウ球菌菌血症では,非典型的な部位への播種性感染を念頭に置く必要がある.

  • 髙島 朗人, 松村 克典, 赤垣 冬子, 中森 綾, 杉浦 寿央
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 7 号 p. 271-275
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル フリー

    症例:60歳男性,糖尿病性腎症,透析歴9年.当院紹介受診・入院の7日前に左前腕自己血管使用皮下動静脈瘻(AVF)穿刺部感染を発症しバンコマイシン経静脈投与を開始した.発症日から右視力障害を自覚したが糖尿病網膜症による視力障害の既往が複数回あり自己判断で後日に眼科受診を予定した.発症8日後にAVF穿刺部感染による右内因性細菌性眼内炎合併と診断しバンコマイシン硝子体注射,発症9日後に右硝子体手術・眼内レンズ抜去術を行った.敗血症性肺塞栓症・下腿打撲創部感染も合併した.血液培養は陰性,右眼房水・AVF穿刺部浸出液・下腿打撲創からメチシリン感受性黄色ブドウ球菌を認めセファゾリン経静脈投与に変更した.AVF感染・敗血症性肺塞栓症・下腿打撲創部感染は改善し眼球摘出は免れたが,光覚は消失した.視力予後を改善し,眼球摘出を避けるためにAVF感染時に内因性細菌性眼内炎発症の可能性を考慮し早期診断・治療開始に努めるべきである.

  • 五十嵐 一彦, 上川 康貴, 梶川 尚, 加藤 珠代, 潮木 保幸
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 7 号 p. 277-282
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル フリー

    サルコイドーシスは全身多臓器を侵す肉芽腫性疾患であり,C型慢性肝炎患者や同疾患治療後に合併することが知られている.今回,C型慢性肝炎にdirect acting antivirals(DAA)治療を行った後にサルコイドーシスを発症した維持血液症例を経験した.症例は40歳代男性.20歳時に交通外傷に対する手術時に輸血を施行された.IgA腎症による慢性腎臓病に対しX-5年から維持血液透析を開始した.X-1年6月,C型慢性肝炎に対しDAA治療を開始した.X年2月に透析時の霧視が出現した.眼科にて両眼性肉芽腫性ぶどう膜炎を認めた.また血液検査ではsIL-2R高値,肺門リンパ節生検にて非乾酪性類上皮肉芽腫を認めたことからサルコイドーシスと診断した.本症例では明らかな高Ca血症を示さなかったが,内因性に1α,25-dihydroxyvitamin D3が上昇し,霧視症状出現以前からPTH-intactが低下していた.腎不全例においては高Ca血症の有無にかかわらずPTH-intactの抑制を機にサルコイドーシスを鑑別にあげることが必要と考えられる.

  • 岡 英明, 中村 昌平, 渡邉 菜穂子, 岡留 淳, 上原 景大郎, 木船 美佳, 森田 洋平, 上村 太朗
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 7 号 p. 283-287
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル フリー

    症例は48歳男性,3年前より左前腕内シャントに瘤を認め,長径55mmに増大し当院紹介となった.瘤切除や形成術は創が大きく,人工血管置換術は吻合部狭窄が懸念されたため,「吹き流し法」を応用した人工血管内挿術を行った.瘤の前後に約2cmの切開をおきシャント静脈を確保して瘤の虚脱を確認した.滅菌ゼリーを塗布した外筒式トンネラーを半周切開した流入血管から挿入し,エコーガイド下に瘤内を誘導,流出血管内に到達させた後,流出血管を半周切開してトンネラーを血管外に誘導した.トンネラーの外筒内に5mmの人工血管を挿入し,外筒を抜去して瘤を跨ぐように静脈内に留置し,両端をトリミングして断端を静脈壁に固定するように縫合,閉鎖した.スリルは良好で瘤の再膨隆がないことを確認し手術を終了した.術後2年半が経過し吻合部狭窄や瘤の再発は認めていない.本術式は2か所の小切開のみで端々吻合を必要としない簡便な根治術である.

  • 児玉 卓也, 山野 由紀子, 岡本 幸大, 石本 杜樹, 内藤 智美, 秦 薫, 大道 竜也, 藤田 圭一, 北 綾子, 大澤 恒介, 北 ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 7 号 p. 289-295
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル フリー

    症例は維持血液透析中の75歳男性.頻回シャント狭窄のため対側肢での内シャント造設を予定し,術前に実施した心エコー検査で低流量低圧較差大動脈弁狭窄症が疑われたが,無症候であり術後に精査を行う予定であった.術後3日目に急性心不全を発症し当院に緊急入院となった.入院後も心不全治療に難渋し,重症度評価のためのドブタミン負荷心エコーを施行できなかったが,大動脈弁石灰化スコアが高値であったため重症大動脈弁狭窄症の診断に至り,外科的大動脈弁置換術にて心不全症状の改善を得た.低流量低圧較差大動脈弁狭窄症は,大動脈弁通過血流量が低下する病態を背景にもち,大動脈弁通過血流速度や平均圧較差が上昇せず,重症度が過少評価されやすい.透析患者は,大動脈弁狭窄症の罹患率が高いため,低流量低圧較差大動脈弁狭窄症の重症度を適切に評価し,重症度に応じた治療法を選択していくことが重要である.

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