【目的】腎代替療法(RRT)選択期における多職種介入とRRT開始後の生命予後の関連を明らかにする.【方法】2011年4月1日から2021年3月31日に当院でRRTを開始された365名を対象とした.RRT選択期間中の多職種介入の有無で2群に分けて,RRT開始後の生存率を比較した.【結果】対象患者の観察期間中央値は1,147(514~1,933)日,RRT導入時の年齢の中央値は65(55~73)歳,eGFRの中央値は6.55(7~13)mL/min/1.73m2であった.多職種介入群では多職種非介入群に比べてPD選択率が高かった.一方,多職種非介入群では多職種介入群に比べて緊急透析導入が多かった.観察期間中に87名が死亡し,多職種介入群では有意に生存率が高かった(ログランク検定,p<0.05).またコックス比例ハザード解析において,多職種介入で死亡リスクが低下していた(HR 0.52,95%CI 0.30-0.88,p<0.05).【結論】RRT選択期における多職種介入は,RRT開始後の生命予後を改善する可能性がある.
【目的】エリスロポエチン抵抗性貧血に対するロキサデュスタット(ROX)の有効性を評価するとともに投与量に影響する因子を探索する.【方法】ダルベポエチンアルファ(DAR)週1回 60 μg以上の42例をROX 100 mg週3回に切り替えた(ROX群).DAR週1回 60 μg未満の40例はそのままDAR投与を継続した(DAR群).18週から24週までの平均Hb値と目標Hb値維持率,24週間のHb値を後方視的に比較した.さらにROXの増量や休薬に影響を及ぼす因子を解析した.【結果】平均Hb値はROX群10.94 g/dL,DAR群11.07 g/dLと有意差なく,2群とも全期間で目標Hb値に収まった.目標Hb値維持率はROX群78.0%,DAR群59.0%とROX群で高かったが有意差はなかった.ROX増量は24週でのトランスフェリン飽和度20%未満と血清亜鉛値50 μg/dL未満と,ROX休薬は開始時の血清フェリチン値100 ng/mL以上と関連した.【結語】ROXはエリスロポエチン抵抗性貧血に高い有効性を示し,十分な鉄の存在によってROXを休薬できる可能性がある.
脊髄硬膜外血腫は,血腫形成により麻痺などの神経症状が進行する疾患である.脳血管障害は慢性腎臓病(CKD)患者にとって重要な合併症であるが,脊髄硬膜外血腫の報告は少ない.63歳男性.糖尿病性腎症を原疾患とするCKD G5A3で,既往歴に,脳梗塞,労作性狭心症があり,アスピリン100 mgを内服していた.頸部の伸展運動を行った際に突然,頸部後方の疼痛,四肢の麻痺が出現したため救急車で来院.頸椎MRIでC2-4レベルに血腫を認め,脊髄硬膜外血腫と診断した.ただちにC2-5の血腫除去術を施行した.術後より麻痺は改善傾向となり,手指の巧緻機能も回復した.CKDに対し血液透析を導入し退院.麻痺の改善後,腹膜透析の手技も獲得でき移行した.脊髄硬膜外血腫は,脳梗塞との鑑別に難渋する可能性があり,また,その関連要因は,血液凝固異常,高血圧などが指摘されており,CKDの合併症として,注意を要すると考えられた.
慢性腎臓病で維持血液透析中の80歳,女性が誤嚥性肺炎で入院した.肺炎に対しスルバクタム/アンピシリン(SBT/ABPC)が開始されたが,入院第5病日より下痢を認め,クロストリディオイデス・ディフィシル(CD)感染症と診断された.メトロニダゾール(MNZ)が開始されたが,入院第10病日より意識障害が出現した.血糖や電解質などの異常なく,頭部MRIで小脳歯状核や脳梁膨大部に高信号域を認め,メトロニダゾール脳症(MIE)と診断された.MNZはバンコマイシン内服に変更され,入院第18病日に患者の意識は改善した.MIEの発症には基礎疾患やMNZの総投与量が関与しているが,血液透析患者では短期間で少量のMNZ使用においてもMIEを発症しうる.MNZ投与中に意識障害を含む中枢神経障害が出現した際は,短期間で少量のMNZ投与でもMIEの発症を考慮し,頭部MRI検査をすることは有用である.
末期腎不全で維持血液透析中の55歳男性が.左重症下肢虚血に対して繰り返し血管内治療を施行されていた.左足の感染の増悪で入院となり,抗生剤加療が開始された.左第3から5趾の重症下肢虚血に対して第7病日よりACE阻害薬を中止し第10病日より吸着式潰瘍治療法レオカーナ®を施行した.開始後6分で血圧低下を認めレオカーナ®中止と生理食塩水の補液を行ったがショック状態が持続した.ノルアドレナリン投与にてショック状態から離脱したが10時間後まで低血圧が持続した.レオカーナ®とACE阻害薬の併用はブラジキニンによるショック状態が出現する懸念があり禁忌である.メーカーから1か月前からの休薬期間が推奨されているものの明確な中止基準が存在しない.本症例ではレオカーナ®施行3日前よりACE阻害薬を中止としたがショック状態が出現し遷延した.レオカーナ®を施行する際のACE阻害薬の中止期間には特段の注意が必要であり報告する.