2024 年 57 巻 5 号 p. 211-215
慢性腎臓病で維持血液透析中の80歳,女性が誤嚥性肺炎で入院した.肺炎に対しスルバクタム/アンピシリン(SBT/ABPC)が開始されたが,入院第5病日より下痢を認め,クロストリディオイデス・ディフィシル(CD)感染症と診断された.メトロニダゾール(MNZ)が開始されたが,入院第10病日より意識障害が出現した.血糖や電解質などの異常なく,頭部MRIで小脳歯状核や脳梁膨大部に高信号域を認め,メトロニダゾール脳症(MIE)と診断された.MNZはバンコマイシン内服に変更され,入院第18病日に患者の意識は改善した.MIEの発症には基礎疾患やMNZの総投与量が関与しているが,血液透析患者では短期間で少量のMNZ使用においてもMIEを発症しうる.MNZ投与中に意識障害を含む中枢神経障害が出現した際は,短期間で少量のMNZ投与でもMIEの発症を考慮し,頭部MRI検査をすることは有用である.