日本透析医学会雑誌
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原著
深夜長時間血液透析への移行が心機能に及ぼす利益
―長時間透析による心不全予防の可能性―
中口 卓也岡崎 雅樹多湖 愛実近藤 聖也恩地 和志籾山 和大平松 英樹両角 國男
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2025 年 58 巻 8 号 p. 380-387

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抄録

深夜長時間血液透析(nocturnal hemodialysis:深夜透析)は,夜間就寝中に約8時間の血液透析を行う,強化透析の一種である.医療機関や在宅での深夜透析は,これまで従来透析では実現困難であった自由食・長時間透析と,フルタイム社会復帰の両立が可能となる.頻回透析が心機能を改善した既報に基づき,当院で2017年以降,従来透析から週3回の施設内深夜透析へ移行した患者の心エコーを,移行直前から移行後最大5年間分析した.当院の深夜透析の適格条件は,65歳以下で就業または就学中かつ心駆出率(EF)45%以上であり,49例(平均50.8歳)が対象群となった.比較群は当院で同時期に従来透析を実施し,かつ深夜透析の条件も満たす40例(平均49.9歳)である.線形混合モデル解析の結果,深夜透析は従来透析と比べ推定EFが保たれ(p =0.022),推定左室心筋重量係数(LVMI)が低下した(p =0.009).高血圧や貧血,体液管理の改善が複合的に心機能に好影響を及ぼしたと推察される.

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© 一般社団法人 日本透析医学会
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