2026 年 59 巻 6 号 p. 372-378
連続携行式腹膜透析(CAPD)患者における肉眼的血性排液は,女性の月経に起因するものを除き稀である.しかし,腹腔内臓器の損傷や血管破綻による多量の腹腔内出血をきたしていた場合,致死的な転帰を辿る可能性がある.本症例は,CAPD歴2年4か月(週1回の血液透析のハイブリッド透析を継続中)の64歳男性である.他県からの訪問中に,嘔気,失神など気分不良を認め,当院へ救急搬送された.外気温が37℃と高く,飲水量も不足していたことから当初は脱水症と診断され輸液加療を行い,血圧の改善をみた.しかし,帰宅準備中に腹痛が出現し,急激な血圧低下を認めた.さらに,腹腔内の状態を映す「窓」となった腹膜透析カテーテルからの血性排液の確認を契機に,小腸間膜出血による腹腔内出血の診断に至り,高次医療機関へ速やかに搬送したことで迅速な治療介入(経カテーテル的動脈塞栓術および緊急開腹手術)を行い救命し得た.病理組織学的検査にて結節性多発動脈炎(PAN)の診断に至った1例を経験したため報告する.