感染性心内膜炎(IE)は維持透析患者において頻度が高く重症化しやすい疾患であるが,腸管由来菌による多菌性IEは稀である.症例は86歳女性.透析歴15年.感染源不明の炎症反応高値を認め,当院へ救急搬送された.来院時所見や検査結果よりシャント肢感染を疑い抗菌薬治療を開始した.血液培養結果より腸球菌とESBL産生大腸菌が検出され,心エコーで僧帽弁に疣贅形成を認めた.IEの診断に至り外科的治療も考慮したが,高齢でADL低下もあるため,保存的治療を選択した.抗菌薬は感受性に基づき調整し,アンピシリンとゲンタマイシンの併用療法を行った.治療後の心エコーで疣贅の消失を確認し,保存的治療が奏効した1例であった.本邦の透析患者における腸管由来菌による多菌性IEは,われわれが検索し得た限りでは認めず,文献的考察を加えて報告する.