人工透析研究会会誌
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PMMA膜及びセルロース膜使用時の白血球動態
その臨床症状との関連考察
須田 昭夫十河 周也森山 芳明海川 巳春若林 啓二内藤 正志太田 和夫酒井 良忠鬼沢 美知子国友 哲之輔菊地 哲也丸井 昭吾田中 健一
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1982 年 15 巻 1 号 p. 45-49

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抄録
セルロース膜では著しい白血球数の-過性減少 (leukopenia) が見られるのに対し, PMMA膜では穏やかな推移に止まることが知られている. 一方, ダイアライザーをセルロース膜からPMMA膜に変更すると患者は快適感を告げることが多い.
これらの事象の原因や相互関係をより明らかにするために, 同一患者群 (7人) に対しセルロース膜とPMMA膜を使いわけ, 各回での白血球像の推移を詳細に比較観察し, またこれとは別にセルロース膜からPMMA膜に切り替えた症例の各種臨床指標の中から, 切り替え前後で差が見られそうな指標として透析前後の体重推移を検討した (19人). さらに白血球像や体重推移に共通して関係する可能性のある両種膜による補体C3への影響を, 膜とインキュベートした血清について免疫電気泳動法で検討した.
Leukopeniaの発生状況に両膜間で有意差が認められ (15分目, P<0.01), 従来からいわれている結果が確認された. 好中球核型状況の検討では, セルロース膜の方がPMMA膜よりも30分時点で左方移動が著しく, また, セルロース膜では後骨髄球と桿状核好中球の合計数が透析後半で著しく増加し, leukopeniaに伴う骨髄からの未熟好中球の放出が示唆された. 補体C3に対してセルロース膜では活性化傾向が強いが, PMMA膜ではほとんど活性化が見られなかった. 両種膜によるleukopenia発生状況と補体活性化状況は, leukopeniaが補体活性化によるとの従来の説を支持している.
透析膜をセルロース膜からPMMA膜に切り替えると, 透析前後の体重が共に200-300g有意に低下した. この膜切り替えによる体重変化は, 補体を含めた複雑な系の反応の結果である可能性があり, 今後さらに検討する必要がある.
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© 社団法人 日本透析医学会
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