抄録
慢性腎不全患者の循環器合併症は, その死因からみても重要な位置を占め, 早急に解決されねばならない問題である. 自験例を含み, 心不全, 心包炎, 血圧異常, 不整脈等の循環器合併症について検討したところ, 以下の知見を得た.
(1) 心不全
透析患者の心不全様症状は, 左心機能が低下した真の心不全による場合と, 体液過剰による肺水腫の場合とがある. 多くは後者による場合であり, 心収縮力の障害は2次的であることが多い.
(2) 心包炎
UCGやCT scanの最近の進歩により, 本症は早期発見・治療が可能となってきたが, その病因については明らかでない. 一部のものは細菌, ウイルスの感染による場合もあるが, 頻回透析により改善することを考えれば, 体液過剰やuremic toxinsの関与が強く示唆され, 本症は尿毒症性多発性漿膜炎の1症状と考えられる.
(3) 血圧異常 (高血圧, 低血圧)
高血圧患者は透析導入により血圧が正常化することが多く, 透析年数が延長するほど高血圧患者数は減少し, 逆に低血圧患者数が増加している. これらの血圧調節異常の持続は循環調節予備能の低下を示すものであり, 予後及び透析中の種々の心血管系合併症に関与するものである.
(4) 不整脈
不整脈をきたす基本的病態としては, 電解質異常, 透析操作による心負荷, 尿毒症性心筋症, 薬剤の影響などが関係する. このうち, 透析患者の日常でよくみられるものは高K血症による場合であり, これはrhythm deathにつながるので注意しなくてはならない.