人工透析研究会会誌
Online ISSN : 1884-6203
Print ISSN : 0288-7045
ISSN-L : 0288-7045
Gore Tex graftを利用した外シャント例の検討
西 秀樹
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 16 巻 1 号 p. 45-48

詳細
抄録

全国の透析患者数は49,000名を越えたが, 当新生会でも, 1971年62名であった透析患者が現在392名と増え, それとともにシャント手術数も過去11年間で2,000例, 最近4年間では毎年300例近くを数えるようになった. また人工血管手術例も徐々に増えているが, Gore Tex使用が殆んどを占め, そのうち, 外シャントは14例である. 年齢は26歳-65歳, 平均48歳, 透析年数は4年-12年で平均7.4年, 男性6名, 女性8名で最長例は32ヵ月 (昭和57年7月現在) で現在も開存中である. 14例中, 1例は9ヵ月後に死亡, 他の1例は21ヵ月後に使用不能となり除去した. さらにもう1例は, 感染と閉塞を繰返すため21ヵ月後にGore Texを除去し, CAPDに移行したが, 厳重な管理にもかかわらず腹膜炎を頻発し, 約1年間でCAPDをうちきった. その後移植したDardik Biograftも数ヵ月で静脈側の破綻を来たし, 現在は左鼠径部にGore Texの外シャントを造設している. これら14例に共通した特徴は, 静脈が細い, 血流が不十分, 血栓と閉塞を来たしやすい, 手術回数が多い, 透析や手術に対し強い不安を持つ等が挙げられるが, Gore Texを移植して外シャントに切換えてからは比較的シャント維持がスムーズとなった. 外シャントの長所をまとめると, 手術手技やdeclottingが容易, 術直後の使用が可能, 穿刺の煩わしさがなく苦痛を与えない. 血管損傷もない, したがって動脈瘤の形成や血腫, 感染などの合併症も少なく, グラフトの寿命も長くなる. シャント量が過剰にならない. 静脈側が細くても動脈側の血流さえ確保できれば透析は可能である. また家庭透析者, 長期透析者, 老人透析者, 女子透析者の一部には内シャントをかたくなに拒否し, 外シャントを強く希望する患者がいるのも事実である. 種々の欠点も含め, 今後さらに検討を続けたい.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top