人工透析研究会会誌
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鉄剤投与を受けた透析患者の肝ヘモジデローシス
CTによる早期診断
福田 和雄斉藤 喬雄京極 芳夫山陰 敬佐藤 博黒沢 孝成木下 康通古山 隆吉永 馨木崎 徳工藤 健一
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1983 年 16 巻 1 号 p. 49-54

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抄録

目的: 慢性透析患者の貧血に対し鉄剤投与や輸血が行われる事が多い. この際の合併症であるヘモジデローシスは従来早期診断が困難であり, 血清鉄値, UIBC, 血清フェリチン値, 臨床経過等により総合的に推定されるのみであった. しかしCTの出現により, 鉄の肝臓への異常蓄積が早期にかつ直接的に診断できるようになった. このような観点から我々は鉄剤投与および輸血を受けた透析患者25名に肝CTを施行した.
結果: 血清フェリチン値と鉄投与量の相関 (r=0.491, 0.01<p<0.02) に比べ, 肝CT値と鉄投与量の間には良い相関が得られた (r=0.714, p<0.001). もともと肝機能障害のある3例を除く22例中10例に一過性のトランスアミナーゼ値 (以下Tra.) の上昇がみられ, 残り12例は経過中Traは正常であった. Traの上昇のあった群はTraの正常な群に比べて有意に鉄投与量が多く, また有意に肝CT値が高かったので, 鉄剤投与の結果肝ヘモジデローシスがおきTraが上昇したものと考えられる. これに対し, 血清フェリチン値とTraの上昇の間には相関はみられなかった. また輸血によっても肝CT値は上昇する傾向がみられた. 肝CT値の上昇とともに脾CT値もわずかながら上昇した. 鉄剤投与を中止して6ヵ月後にCTを再検してみると, 肝CT値はほとんど変化せず, 鉄の肝臓への沈着は不可逆的である事が示唆された.
以上の結果により, 肝CT値は血清フェリチン値よりも正確にヘモジデローシスを反映しており, その早期診断に有用と思われる. 鉄剤投与または輸血の施行されている透析患者には経過を追って肝CTを施行し, 止むを得ない場合でも肝CT値80 H. U. を越えないようにすべきである. ただし肝CTには鉄欠乏に関する情報はなく, 従来通り血清フェリチンも併せて参考にすべきであろう.

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