人工透析研究会会誌
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CAPDにおける溶質除去特性
峰島 三千男鈴木 利昭須藤 尚美竹本 三重子阿岸 鉄三太田 和夫酒井 清孝
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1983 年 16 巻 5 号 p. 321-324

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抄録
CAPD療法において, 個々の患者に対する治療条件 (透析液量, 透析液組成, 治療時間, スケジュールなど) を定めることは, 維持透析確立の上で重要な課題といえる. そこで本研究ではfirst stepとしてCAPDの溶質除去特性をcompartment modelの手法を用いて検討した.
CAPDの溶質除去特性を他の血液浄化法のそれと比較する場合, 各治療で定義されたクリアランスCLを [l/wk] の単位に換算して評価する場合が多い. しかしこのCLでは治療時間, 血漿濃度レベルが異なるため厳密に除去特性を比較検討したことにならない. そこで本研究では経時的にサンプリングした血漿濃度をcompartment modelに入力して得られる1週間平均溶質濃度CS, さらに溶質生成速度Gを除去した1週間平均クリアランスCL (=G/CS) を除去特性比較のための指標として用いた.
まずすでに報告されたG, 細胞膜透過係数KC, 腹膜での物質移動容量係数KAおよび反撥係数σなどのパラメーターの値を用いて体液量39lの仮想患者のCSを推算した. その結果CAPD施行時のBUN, creatinine, UAの値はそれぞれ87.0, 25.3, 8.43mg/dlと臨床値に比べて高値を示し, これらの物質のGが減少していることが推測された. そこで実際のCAPD患者の血漿濃度の平均値をCSとして逆にGを推算したところ, BUN, creatinine, UAのGの値はそれぞれ7.29, 0.96, 0.347となり, 導入前HD施行時の10.4, 1.38, 0.429に比べて20-30%減少していることが明らかとなった.
これに伴い, HD, HF, CAPDのCS, CLを推算したところ, 溶質除去特性を表わす溶質の分子量MWとCLの関係についてはCAPDとHFはきわめて類似した傾向を示した. 一方, MWとCSとの関係は前述のGの低下の影響が加味されて, HD, HFの長所を合せたHDF施行時に近い濃度レベルを示した.
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© 社団法人 日本透析医学会
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