人工透析研究会会誌
Online ISSN : 1884-6203
Print ISSN : 0288-7045
ISSN-L : 0288-7045
16 巻, 5 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • インスリン受容体からの検討
    中村 義雄, 西岡 均, 金綱 隆弘, 近藤 元治, 藤沢 明生, 四方 統男
    1983 年16 巻5 号 p. 273-279
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全に耐糖能異常が存在することはよく知られているが, その成因については不明な点が少なくない. インスリン抵抗性もその一因と考えられているが, この点をさらに明らかにするためにインスリン受容体の面から検討した. 未透析腎不全患者10名, 透析患者12名および正常者6名を対象に赤血球のインスリン受容体を検討し, 0.5g/kgのIVGTTを行い, K値 (血糖消失率) およびΣIRI (IRIの総和) を求めた. K値は未透析群 (1.32±0.30) では正常群 (1.92±0.25), 透析群 (1.82±0.34) と比べて低値を示したが, 正常群と透析群との間には差がなかった. ΣIRIは未透析群 (445±78μU/ml), 透析群 (420±80μU/ml) は正常群 (260±38μU/ml) と比べて高値を示したが, 未透析群と透析群との間には差がなかった. インスリン特異結合率 (赤血球2.4×109個/mlへの0.2ng/ml125I-インスリン) は未透析群 (3.99±0.76%) は低値を示したが, 正常群 (5.50±0.69%) と透析群 (5.11±0.80%) との間には有意差がなかった. Scatchard解析より, 未透析群におけるインスリン特異結合率の低下はインスリン受容体数の減少によるものと思われた (正常群64個/cell; 透析群58個/cell; 未透析群45個/cell).
    さらに, 耐糖能異常とインスリン受容体との関係を明らかにするために, インスリン特異結合率とK値および空腹時IRI, ΣIRIとの関係をみたが, 透析群において特異結合率とK値との間に正の相関を認めた. このことより, 未透析腎不全患者の耐糖能異常はインスリン受容体数の低下によるものと思われ, 透析療法はインスリン受容体レベルでの改善により耐糖能障害を正常化させるものと思われた.
  • 村沢 恒男, 広藤 良樹, 藤本 紘太郎, 倉田 文秋, 小川 富雄, 羽入田 陽一郎, 原 文男
    1983 年16 巻5 号 p. 281-288
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    最近, 血液浄化法として血液透析法 (HD) の他に, 血液濾過法 (HF) も広く行われるようになった. HFはHDよりも高血圧, 不均衡症候群, 脂質代謝異常および末梢神経障害などの是正に優れているといわれる. 今回われわれは, 慢性腎不全患者6例につきHDおよびHF施行時における心機能を測定し, 比較検討を行った.
    症例の内訳は, 期間別では長期透析3例, 導入期透析3例, 原疾患別では糖尿病性腎症3例, 慢性腎炎2例, 慢性腎盂腎炎1例であった. HDはホローファイバー型ダイアライザー (有効面積0.8-1.3m2), 透析液はAK-Solitaを使用, HFはSartorius Hemofilter (有効面積0.29m2), 補充液はHF-Solitaを9l使用した.
    方法はSwan-Ganzカテーテルを挿入し, 肺動脈圧 (PAP), 肺動脈楔入圧 (PCWP), 中心静脈圧 (CVP), 熱希釈法にて心拍出量 (CO) を測定, また同時に血圧 (BP), 心拍数 (HR) を測定し, 心係数 (CI), 1回拍出係数 (SVI), 左室仕事量 (SWI) および全身血管抵抗 (SVR) を算出した. 各測定はHDおよびHF開始前, 開始1時間後, 3時間後および終了30分後の計4回行った.
    結論として, 1) PCWPと, 施行前を100としたSWI%をもとに心機能曲線を描かせると, HFにおける方がHDにおけるよりも心機能の変動や低下が少なかった. 2) 体重減少率 (ΔBW%) とSWI%との関係をみると, ΔBW%にかかわらずHFにおける方がHDにおけるよりもSWI%の低下が少ない傾向がみられ, 症例4を除いた全例につき検討すると, おのおの片対数直線に高い逆相関係数で回帰し, 明らかな差を示した. 3) 以上より, 左室収縮能からみると, HFの方がHDよりも心機能への影響が少ないと考えられた.
  • 細川 進一, 小平 精吾, 友吉 唯夫, 西尾 利二, 長尾 昌寿
    1983 年16 巻5 号 p. 289-294
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析患者の血清アルミニウム (Al) の透析中の動態および血清Al濃度と透析期間, 水酸化アルミニウム (アルミゲル) の服用量との関係について検討した. Alは透析患者の腎性骨異栄養症 (ROD) と関係があると報告されており, 私達も血清Al値とRODと関係が深いといわれている血清カルシウム (Ca), 血清リン (Pi), 血清中の副甲状腺ホルモン (iPTH), 血清カルシトニン (iCT) との関係について検討した.
    透析に用いられる水は我々の施設では水道水を活性炭, 脱イオン装置, 逆浸透装置 (RO装置) を通して浄化し, これと透析液とを混合して透析液としている. 水道水中に含まれるAlの量は季節, 時間により大きな変動があるが, それは1.2μg/dlから3.6μg/dlであった. これが純水装置を通過したあとでは0.3μg/dlから0.6μg/dlとなる. また透析液原液には約2.0μg/dlのAlが含まれているが透析液のAl濃度は0.3μg/dlから0.6μg/dlであった. 透析前の血清Al値は8.12±5.32μg/dlであり, 5時間透析の終了直後では6.66±4.26μg/dlと減少傾向を示した. 透析開始15分後にECUM方法を用いて濾過液を約60ml採集し最初の30mlを捨てて後の濾過液のAlの濃度を測定したところ, 1.28±0.914μg/dlであり, これは総血清Alの約27.55±18.9%にあたる. このAlが血清中のfree diffusible Alである. 終了直前のそれは0.69±0.35μg/dlと有意に (P<0.05) 低下した. 血清中のfree Alは終了直前では12.89±9.17%と有意に (P<0.001) 低下した. 血清Al値とアルミゲルの服用量との間には有意な関係は認めなかった. 血清Ca, Pi, iPTH, iCTとも同様に有意な関係は認めなかった. 透析月数と血清Al濃度とは正の有意な (P<0.02) 関係を認めた. 血清のdiffusible Al濃度が透析液中のAl濃度より高いときはAlは血清中から透析液中に拡散によって移動する. 透析によりAl除去するためには透析液中のAlの濃度を血清中のfree diffusible Al濃度より低くすることが必要である.
  • 井上 聖士, 長坂 肇, 平岡 敬介, 荘野 忠泰, 吾妻 真幸, 湯川 進, 稲守 美紀, 井原 元, 岩崎 徹, 平林 俊明, 宮本 孝 ...
    1983 年16 巻5 号 p. 295-301
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    二次性副甲状腺機能亢進症を伴った重症な腎性骨異栄養症の17例に副甲状腺亜全摘術 (PTX) を行い, 骨格系以外の系の腎不全症状に対するPTXの効果を検討した.
    術前のPTHレベルは全例増加しており (平均18.2ng/ml), 術後はほとんど全例が正常化した. 摘出した副甲状腺の重量は0.45-6.55g (平均2.7g) であった. 術前の赤血球数の平均は268万であったが術後は292万に増加した. 血色素量, ヘマトクリットも同様に増加したが網状赤血球数には変化がなかった. 収縮期, 拡張期血圧はPTX後ただちに下降し, その後も下降したままであった. 平均下降血圧の程度は収縮期で17mmHg, 拡張期で7mmHgであった. 術前の腓骨神経伝導速度は正常範囲にあり, PTX後も変化しなかった. 全例がPTX後体重が増加した.
    近年, PTHは尿毒症性毒素の1つと考えられており, 多くの尿毒症症状すなわち, 貧血, 高血圧, 神経障害, 蛋白代謝障害の原因物質とみなされている.
    今回の我々の論文から, PTHが多くの尿毒症性毒素の重要な1物質であることが考えられた.
  • 大崎 和弥, 福元 弘和, 森田 隆久, 大塚 秀行, 前田 栄樹, 満枝 和郎, 窪薗 修, 山口 幸一, 原田 隆二, 尾辻 義人, 橋 ...
    1983 年16 巻5 号 p. 303-307
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者8例に不活化HBsワクチンを投与後, 抗HBs抗体産生能を検討し以下の結果を得た. 1) 血液透析患者では抗HBs抗体産生能の低下および抗体の発現時期の遅延傾向がみられた. 2) 免疫学的検索では患者の抗HBs抗体非産生群でT cell subsetsのうちOKT8陽性細胞の比率の増加がみられた. 3) in vitroのmitogenに対するリンパ球増殖能は抗体産生群と非産生群の間で特に差はみられなかった. 4) 血清免疫グロブリン, 補体, 副甲状腺ホルモンおよび血清フェリチン値は抗体産生能と関係がなかった.
    以上の事実より, 血液透析患者の抗HBs抗体産生能の低下は, suppressor T cellを介した免疫能抑制の機序が関与しているために起こると考えられた.
  • 多川 斉
    1983 年16 巻5 号 p. 309-315
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    当院で造設したblood accessの追跡調査と循環動態の検討を行った.
    1) 長期成績: (a) 内シャント227件. 再造設を要したものは16件でその過半数は1年以内に生じた. 開存率は1年で92%, 6-10年でなお約80%であり, 1年間トラブルはなく使用できた内シャントはその後も長期間の使用に耐えることが示された. (b) E-PTFE graft 28件. 前腕または大腿の動静脈間graft (A-V graft) を17件, 大腿動脈jumping graft (大腿動脈の鼡蹊部と大腿下部にgraftを吻合し, 大腿皮下にbypassを形成する) を11件設置した. これらのうち閉塞または使用不能5件, 開存18件で, 開存期間は最長6年7カ月, 平均1年6カ月であった. この成績は内シャントより劣るが, 二次的に選択されるblood accessとしては満足できるものと考えられる.
    2) 超音波Doppler法による血流波形の記録と色素稀釈法による心拍出量測定によって, 循環動態に及ぼす影響を検討した. (a) 標準的な前腕の内シャントでは, シャント側の上腕動脈血流速度は他側の約5倍であった. シャント側上腕動脈の流速が20cm/sec以上, かつ他側の2倍以上なら, 内シャントは機能良好と判定され, これ以下のシャントは修復を要した. (b) 内径8mmの大腿部loop形A-V graft 3例では流量1l/min以上と過大であり, うち2例の高齢者では心不全を生じ, blood accessの関与が推定された. その他の前腕または大腿に設置したA-V graft (φ5-6mm) では, 心不全をきたさなかった. とくに, jumping graftは心拍出量を増大させない利点があるので, 心不全症状に内シャントないしA-V graftの関与が想定される2例に設置し, 心不全の改善がみられた. 本法は冠硬化症や心不全のある患者に適する術式と考えている.
  • 上村 るり子, 関 瑞子
    1983 年16 巻5 号 p. 317-320
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    長期透析患者の増加に伴い合併症を有する患者や高齢者が増加し, 施設内外における看護の連携, 包括看護が重要となってきている. また施設間での患者の移動に伴い情報の伝達, 交換や看護レベルの維持, 向上をはかるために, より機能的な看護記録が必要と考えられる. 当院では機能的かつ円滑な情報の収集を目的とし昭和56年5月-57年5月まで以下に示す4種類の記録用紙を考案, 使用した. その結果について報告する.
    1) 導入時1号用紙. 導入時に収集すべき情報を項目別に示したもの. 情報の伝達, 問題点の把握が容易となった.
    2) データー整理表. 体重, 血圧, 各種検査データー, 投与薬, 注射, 看護援助などを長期的に連続して記録する. データーの変化, 異常の早期発見, 長期的経過および看護経過の把握に役立っている.
    3) 年間サマリー. 1ヵ月ごとに主なデーターと患者の状態を要約し年単位でまとめたもの. 導入から現在にいたる経過の把握ができる.
    4) 転院時看護添書. 転院時までの看護経過, 今後の継続必要事項その他について記録し転院先へ送る. その結果, 継続看護に必要な情報の伝達が円滑に行われるようになり看護活動の展開に効果的であった.
  • 峰島 三千男, 鈴木 利昭, 須藤 尚美, 竹本 三重子, 阿岸 鉄三, 太田 和夫, 酒井 清孝
    1983 年16 巻5 号 p. 321-324
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    CAPD療法において, 個々の患者に対する治療条件 (透析液量, 透析液組成, 治療時間, スケジュールなど) を定めることは, 維持透析確立の上で重要な課題といえる. そこで本研究ではfirst stepとしてCAPDの溶質除去特性をcompartment modelの手法を用いて検討した.
    CAPDの溶質除去特性を他の血液浄化法のそれと比較する場合, 各治療で定義されたクリアランスCLを [l/wk] の単位に換算して評価する場合が多い. しかしこのCLでは治療時間, 血漿濃度レベルが異なるため厳密に除去特性を比較検討したことにならない. そこで本研究では経時的にサンプリングした血漿濃度をcompartment modelに入力して得られる1週間平均溶質濃度CS, さらに溶質生成速度Gを除去した1週間平均クリアランスCL (=G/CS) を除去特性比較のための指標として用いた.
    まずすでに報告されたG, 細胞膜透過係数KC, 腹膜での物質移動容量係数KAおよび反撥係数σなどのパラメーターの値を用いて体液量39lの仮想患者のCSを推算した. その結果CAPD施行時のBUN, creatinine, UAの値はそれぞれ87.0, 25.3, 8.43mg/dlと臨床値に比べて高値を示し, これらの物質のGが減少していることが推測された. そこで実際のCAPD患者の血漿濃度の平均値をCSとして逆にGを推算したところ, BUN, creatinine, UAのGの値はそれぞれ7.29, 0.96, 0.347となり, 導入前HD施行時の10.4, 1.38, 0.429に比べて20-30%減少していることが明らかとなった.
    これに伴い, HD, HF, CAPDのCS, CLを推算したところ, 溶質除去特性を表わす溶質の分子量MWとCLの関係についてはCAPDとHFはきわめて類似した傾向を示した. 一方, MWとCSとの関係は前述のGの低下の影響が加味されて, HD, HFの長所を合せたHDF施行時に近い濃度レベルを示した.
  • 瀬川 智一, 松川 晃, 佐多 和子, 稲本 元
    1983 年16 巻5 号 p. 325-330
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    細胞培養法を用い, 医療用プラスチックの水溶性および脂溶性抽出物質の細胞に及ぼす影響を検討した.
    ethylene-vinylacetate copolymerならびに可塑剤無添加および添加のpolyvinyl chlorideのエタノールあるいは血清抽出液は, 蒸留水あるいは生理食塩水抽出液と異なり, いずれもマウス由来L-929細胞の増殖を濃度依存性に抑制し, 形態学的な変化も惹起した. 一方, polyethyleneの抽出液はいずれも培養細胞に影響を及ぼさなかった.
    現在の溶出物に関する安全性試験では主に蒸留水および生理食塩水を抽出溶媒としているが, 直接血液と接触する器材に対しては水溶性のみならず脂溶性物質の溶出にも十分注意を払うべきであろう.
  • 芝本 隆, 斉藤 博, 横川 正之
    1983 年16 巻5 号 p. 331-337
    発行日: 1983/10/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    目的: 血小板と透析膜の接触から血小板粒度分布を測定し, 意義について検討した.
    方法: 1) in vitro健常人男性9名より採血を行い全血1mlに対しheparin 17単位を加えplatelet rich plasma (PRP) を得た. 採取したPRPを3μM ADPと接触させ, 接触前後の血小板粒度分布を測定した. また, Cuprophane, EVALの中空糸膜接触前後の血小板粒度分布を同様に測定した. 2) in vitro Cuprophane, EVAL, PMMAの各膜によるdialyzerで9名の透析患者を対象に血小板粒度分布を測定した. 採血は透析開始5分後にdialyzer出入口より行った. 検討した血小板粒度分布の範囲は0-56.6μ3の領域で行い, 血小板の測定にはCoulter Counterを使用した. 結果: 1) ADP接触前後の血小板粒度分布はADP接触前に比べ接触後5.66-11.32μ3間の領域で減少を, 16.98μ3以上の領域で粒子の増加を認めた. Cuprophane膜中空糸では, 接触前に比し接触後5.66-11.32μ3間の領域で減少を, 16.98μ3以上の領域で粒子の増加を認めた. EVAL膜中空糸では16.98μ3以上の領域で粒子の増加を認めたのみであった. 2) 慢性透析患者にCuprophane, EVAL, PMMAの各膜dialyzerを使用し血小板粒度分布を測定した結果, Cuprophane膜dialyzerの出入口では粒子の小さな領域の減少と, 粒子の大きな領域の増加がdialyzer入口側に比し出入口側で認められ, EVAL, PMMA膜dialyzerではdiaiyer出入口での変化を認めなかった.
    結語: Cuprophane膜中空糸に接触した血小板粒度分布では5.66-11.32μ3間の領域で減少を, 16.98μ3以上の領域で粒子の増加を認めた. これは血小板がCuprophane膜との接触により活性化され, いくつかの凝集塊を形成した結果と考えられる. EVAL膜中空糸の接触前後ではCuprophane膜中空糸に比べその変化は少なかった. Cuprophane膜dialyzerで血小板粒度分布に変化が認められ, 合成膜ではこれが観察されなかったことより, 各膜の性状による血小板への反応性の相違が考えられた. 以上より, 血小板粒度分布測定は透析膜を含めた人工材料の生体適合性評価に意義あるものと思われた.
feedback
Top